クラウドについての議論は「サーバーの高熱を冷やすためのクーラー電力をいかに減らすか?」という詰まらない議論に収れんされていて、なんとピントはずれか?とトホホの気分である。
確かに米国発のクラウド大手がグーグル、アマゾンなどが大規模なデータセンターをコンテナ型データセンターを世界展開したことに目をくらまされて、コンテナ型が本命だと錯覚してきたのは、同情しながら理解できる。米国でどっと拡大し、日本にはその片鱗もない状況を憂うるのは極めて正しい反応に思える。だからと言って、その追いつくための対策がコンテナ型データセンターの誘致なのか? ここに勘違いがある。
まず、コンテナ型データセンターを主張する人が、サーバーが発生する熱を冷やすために、雪や氷の冷熱を利用するのが優位だと指摘しているのが怪しい。乾燥地帯の結露や仮に加温した際の結露の問題をどう解決しているか、解決策の説明がない。さらに、大規模なコンテナ型データセンターが必要だと言われるが、そんな大規模のデータセンターの需要がどこまであるのか? グーグルやアマゾンは地球的規模で、大規模なデータセンターを世界各所に配置する必要があるが、それ以外の需要はあるのか? まず、ないだろう。グーグルやアマゾンのためにクラウド特区を作る理由があるのか?
百歩譲ってそれを了承しても良い。北日本にコンテナ型データセンターを誘致する特区を作るのも挑戦したらよいだろう。ただ、だからと言って、日本のクラウド戦略の本流だと錯覚してもらっては困る。他の日本型クラウドの可能性の芽をつぶしてはかなわない。
日本のクラウドの議論の中心は、国際競争力をどう確保するかである。グーグルやアマゾンを誘致するかどうかは、「後追い」の話である。コンテナ型でコストを下げて国際競争力を獲得する、などと言う事はありえない。電力コストが高く、土地代が高く、人件費が高い日本の環境で、コスト競争をすることがどだい無理なのである。国際競争力は、コストではなく、別の機能である。結論からいえば、情報セキュリティを日本のデータセンターがどの水準まで保証できるか、である。厳しいセキュリティ基準を制定し、これを守らせる仕組みを確立して、「銀行はスイス、情報は日本」というレベルの高度な情報セキュリティを日本で法制化して行けば、競争力のあるデータセンターサービスが可能になるのではないか。
法律で難しければ、特区を作れば良い。ということで、現在のコンテナ型データセンター議論の限界が見えるの。クラウド特区の要件の一つに、高度なセキュリティを確立する、ということを加えてもらいたい。
この地域は、もちろん、沖縄である。沖縄の新しいサービス産業がここから誕生する可能性がある。今回はすでにコラムの字数を越えているので、次回以降、さらに詳しく論じさせてもらいたい。