沖縄県・うるま市内で整備中のIT産業拠点「沖縄IT津梁(しんりょう)パーク」に、新たに2つのオフィス棟が完成し、9月第2週から入居が始まった。すでに完成、運用している第1棟を加えて合計3棟の運用を開始した。3棟ともほぼ満杯で、こうした産業団地が全国的に苦戦するなかでは、順調以上の滑り出しといえる。アジア経済の急進展を前に、沖縄の情報拠点の地政学的な価値が今後、明確になってくるが、その拠点としての期待が高まる。
このパークの建設計画は、稲峰前知事の時代に議論されてきた構想を仲井真知事が引き継いで、4年ほど前に本格的に検討が始まった。その座長には筆者が就任して、候補地の選定にかなり意見の違いがあったが、座長としては、総合的な評価点を基に、うるま市の臨海部、すでに埋め立てられて製造業誘致用に準備されていた未利用地域を決定した。さらに整備を進めて、いくつかの進出企業との下交渉も進めてきたが、まさに用地の整備完了を目前にして、2年前の「リーマンショック」が襲った。
計画自体が危ぶまれる時期もなかったわけではない。下交渉が進行中だった内地の企業がほとんど、新設の事業施設の計画を凍結、ないし、中止を決定したからだ。一部の企業では、沖縄への出張も禁止になった。飛行機代がかさむ沖縄は「海外」扱いで、海外出張禁止と同等の扱いとなったのだそうだ。
その結果、現在も、民間企業に丸ごと進出してもらう民間用地はまだ、契約先が決まっていない。完成した3棟はいずれも沖縄県が管理する建物施設で、当初計画では、公共性が高い組織が入居する目的だったが、とりあえず小規模ないし、中規模の事業運営を希望する企業にも利用できるようにしたところ、ほぼ満杯になったものである。進出企業としては、富士通ラーニングメディア(eラーニング)、トランスコスモス(ソフト開発)、インデックス沖縄(データセンター運用)、ソニーサプライチェーンソリューション(物流オペレーション)、グロヴァレックス沖縄(インターネットサイト監視)、アークス(ASPサービス)、沖縄ソフトウェアセンター、OSS活用センター、レキサス(サイト運営)などだが、こう書き連ねてみると、続々と入居が進んでいる、という実感がある。
特に内地から進出した企業は、現在、社員採用試験を行い、業容拡大に備えている。
沖縄は今後、日本企業のアジア事業展開の重要な拠点になる。IT津梁パークが姿を現してくるにつれて、その現実味が増してくる。