2012年で終了する現行の「沖縄振興計画」に変わる新たな沖縄振興策を法律にするか、沖縄振興審議会では現在、審議が進んでいるが、筆者が属している専門委員会では具体的な振興計画のテーマの議論が進んでいる。その中で、先日、沖縄の産業の2本柱の一つである「観光」について沖縄ツーリストの東良和社長が特別委員として意見を述べた。多角的な論点で委員会のメンバーに深い印象を残した。
特に注目されたのは、沖縄が目指すべき観光サービスの内容を観光客のライフステージ別に潜在需要を指摘したリストである。各年代別に沖縄の魅力を開発すべきテーマが眠っていることを改めて認識した。
これまでは年代別の観光テーマとして「沖縄ウェディング」が花開いているが、年代ごとに絞り込んで行くと、明確にサービスのイメージが出来上がる。この議論の内容は公開されるので、いずれ、内閣府のサイトで沖縄振興審議会の記録をみて詳細は知っていただきたいが、筆者が認識を新たにしたのは「海洋散骨葬」を観光の新しいメニューとして提起したことだ。
強く心を動かされたポイントは2つある。1つは、「散骨葬」について国民の関心が高まりつつある事実だ。映画「おくりびと」によって「葬儀」のイメージが大きく変わり、死者に対して生き残った者がどのように処するか、という考え方も大きく変わったような気がする。葬儀の仕事に携わりたいという若者の数も増加しているように聞いている。
その流れの中で、死んだ後、自分の葬儀をどのようにしてほしいか、遺言で希望を述べることも多くなっているのだろう。その中で、明るい南の海に散骨してほしいという希望があるのも想像に難くない。その地域として沖縄の美しい海を体験したことがある人が沖縄の海への散骨を選ぶのも、さらに想像に難くない。確かに観光産業としてニーズに応えるべきテーマである。
もう1つのポイントは、沖縄の冬場の観光のテーマの1つになる、という予想である。夏場ににぎわうサンゴ礁を目指したダイビングやシュノーケリングは、冬場にはほとんど楽しむ客はなく、年間の半分、ダイビング業者は開店休業状態になる。冬場にはダイビングに変わるテーマが必要である。一方、沖縄で海洋散骨葬を行うにしても、夏場は熱くて、正装は勘弁してほしい。海洋散骨葬の時期だけはずらして冬場に行う、というのであれば、新しいサービスとして受け入れる余地があるのではないか。
社会生活で正装になる代表的な儀式は結婚式と葬儀である。葬儀について、明るい「儀式」としてのイメージが定着することが条件だが、「沖縄ウェディング」があれば「沖縄フューネラル」もありうるのかもしれない。「沖縄ウェディング」は沖縄ワタベウェディングの翁長良晴社長が「ハワイウェディング」を企画した経験を生かして、その企画力で生み出したもので、今や、県外者の結婚挙式数では軽井沢に代表される長野県を抜いて全国一位にまで成長した。
「海洋散骨葬」という新しい社会習慣を生み出すことができるかどうか、努力が必要だが、法律やルールを確立して「粗悪事業者」が出ないよいうに配慮しながら、挑戦してみるのも重要だろう。