まだ全容は分からないが、分かっているだけでも100年に1度の大災害だった。人口が増加して、海岸近くに多数の家屋が密集するようになった。たいがいの津波は防ぐように堤防も作ったが、不幸なことに、押し寄せてきた津波は堤防の遙か上を乗り越えていった。周辺を海に囲まれる沖縄にとっても「想定」を一段と厳しくしなければならない、と実感させる大津波だった。
しかし、ここには人間の油断があったことは確かだ。今回の津波を上回るものがなかったわけではない。最近、地質調査で分かってきたのは9世紀に三陸沖で起きた地震に伴う大津波で、これまで防災の基準にされたチリ地震津波や明治三陸地震の津波を遙かにしのぐものだった。内陸3キロ、4キロの地層から津波が到達したことを立証する資料が採取されたそうである。推定マグニチュードは8.6と発表されているが、1200年前の出来事で、しかもまだ大和政権の勢力が十分に及ばない時代のことで、文献やその他の文化的遺跡から考察するのは難しい。しかし、学会の結論とそれに基づく警告は、現在の津波対策は不十分である、ということだった。
特に福島原発については2009年というから2年前に、福島原発が想定しているよりはるかに巨大な津波が過去にあったとして、警告を発したという。わずか2年前だが、東京電力はこれを「科学的根拠が不明」と一蹴して今日を迎えたようだ。
これは沖縄にも大きな教訓である。沖縄には歴史上、震度5を越える大地震は来ていない。土地も軟弱な埋め立て地や扇状地ではなく、固い珊瑚礁である。揺れを増幅するような地形ではない。それで「沖縄は地震がない」と安心しているが、果たして、それで安心して良いのか。今回、東京電力は「想定外」の地震、津波、を強調しているが、それは想定が甘かっただけの話で、シビアな大自然は、その愚かな人間の想定を鼻でせせら笑っているかもしれない。
想定の幅をさらに大きく広げて防災対策、それを突破されることも想定した避難策を練る必要がある。今回の震災以降、沖縄のデータセンターの会社には内地の企業からこれまでの6倍近くの問い合わせが来ているそうだ。災害に強い「沖縄」をさらに保証するためにも、一段、厳しい想定の防災策、災害対策を急ぐべきだろう。