東日本大震災直後から、沖縄県庁やデータセンター企業に対して、バックアップセンターとして進出することが可能かどうかの相談が激増している。計画停電の混乱から、まず、関西地域に打診し、その後、九州、さらに沖縄に打診先が西へ延びている、ということらしい。実際にバックアップセンターを作るかどうかの決断はずっと先になるだろうが、それまでに沖縄が解決して置かなければいけない課題も少なくない。特に電力である。
沖縄は石炭火力が主力だが、急に進出企業が増えたとして、電力施設をどこまで増強できるか。石炭の長期安定的な調達先を確保することも忘れてはなるまい。石油は国内では調達できないが、石炭はいざとなれば廃坑を復活させれば何とか国内調達も可能である。何とか、だが。それよりもオーストラリアからの安定輸入が妥当だろう。もう一つ、自然エネルギーの開発も重要だろう。沖縄は海上にあるので、強風が吹き抜ける。これまでの技術ではこれに対応して安定的に電力を生成することが難しかった。しかし、この自然エネルギーを活用しないのはもったいない。風車のような風に垂直に羽根を回して発電するのでは確かに不安定だろうが、欧州では地上に水平に回転体を設置して水平に回転させる方式もあるそうだ。先入観を捨てて技術開発投資をすれば、沖縄の自然にふさわしい電力が得られるに違いない。
日経新聞記者時代、風力発電、太陽光発電の記事を書くと、必ず「日経新聞ともあろうものが非現実的な技術があたかも実現するような誤った記事を載せるとは・・・」という批判が新聞社上層部に寄せられた。新聞社の編集局は、そうした批判には、冷静に裏付けをとるので、上層部はかえって「中島の記事は注目されているから、同種の材料を徹底的に調べて記事の続報を書け」と励ましてくれた。そのために筆者は東京電力からは以降、事実上の取材拒否にあった。どんな取材を申し込んでも「担当者が忙しいので」といつまで経っても放置状態で、これは取材拒否だな、と感じていて、今日に至るまでその不信感は拭えない。
太陽光もそうである。国内の研究者に聞くと、風力は採算に合わない非現実的技術だが、太陽光も採算に合わない、と理論的に説明してくれる。今にして思えば、エネルギー関係の研究者の多くは原発推進の電力会社から研究費を受けているので、原発の対抗馬の自然エネルギーに否定的になったのは仕方がない。その結果だろうが、日本には優秀な自然エネルギーの研究者が育っていない、といえば言い過ぎだろうか。実際、この種のセミナー開催で講師を探しても、本当に日本にはいない。
沖縄は、幸い、原発がない。自然エネルギーに対する抵抗勢力が少ないということである。データセンターは電力多消費型産業である。ぜひ協力して、沖縄の地域で生産できる自然エネルギーを使った新しい産業連関図を創造して行こうではないか。この数日、三陸から茨城沖までの地震の余震に揺すぶられながら、そんなことを考えている。