6月8日に那覇市で開かれた沖縄振興審議会専門委員会は、最終報告案の内容を巡って議論は過熱した。沖縄側の委員と内地の学識経験者の間で認識の違いが際立った。特に、沖縄側の委員が、全国平均に比べて沖縄の現状が劣っている点を指摘して、その向上策を多数盛り込んだ提言がある一方、内地の学識経験者は、「沖縄だけにメリットがあるような振興策は3.11以降、被災地域の復興策に国の重点が移っている中で到底、受け入れられない。沖縄の振興が日本の成長戦略を促す脈絡で立案しなければならない」と一斉に強調した。
筆者は、かねて、リーマンショック以降、世界の経済はアジア中心に重心を移行していて、日本産業界は今後、急速にアジアでの事業展開を急がなければならない。その際、事業展開の必須基盤となる情報インフラを、アジアに最も近い、というか、東アジアの中心に位置する沖縄に構築することが日本産業界の競争力強化につながる、として、沖縄の情報通信産業強化策が日本経済復活に不可欠だと主張してきた。沖縄振興策が日本経済発展につながる、というモデルである。
この主張はかなり浸透して、最終報告案の随所に散りばめられていたが、個々の文章には、「日本経済の発展に機能する」という目的意識が薄く、沖縄の雇用を促進する、という沖縄地域のメリットがまだ前面に出ていた。一人一人の発言時間は短かかったので、筆者の発言も意を尽くせなかったが、「日本経済の発展を促進するために沖縄の情報通信産業の充実が不可
欠」という文言を追加するように提案できた。
翌朝、NHKの沖縄ローカルニュースでは委員会の模様が長時間映し出されて、「沖縄の振興だけではなく、国益にもつながる計画に」という内地側の主張も紹介されていた。
この審議会は来年3月に終了する現在の10か年沖縄振興計画後、次期振興計画の内容を検討するために開催されている。最終回の議論が最も充実していたが、時間が足りず、20分、超過した。