津波被災予想を冷静に受け止める

津波被災予想を冷静に受け止める

  国土交通省は、東日本大震災時に襲来した津波の最大値に合わせた被害予想を発表したが、海に囲まれた沖縄県は、海岸線からの距離が10キロ以内で標高30メートル以下の地域が、県土の約53%に当たる1200平方キロもある。その地域に、人口の約54%に当たる75万1622人が居住している。津波が低かった場合で、標高10メートル以下では県土の約25%、561平方キロで、人口は28万647人になる、という。

  沖縄には、歴史上、大地震の記録がなく、「大地震はない」とされているけれども、津波ではかつて、石垣島を15メートル以上の津波が襲って大被害を与えたという記録がある。しかし、突然、襲ってくる大地震に比べて、津波は、震源地から海岸に達するまでに一定の時間がかかる。津波の予報が迅速なら、高台に逃れる時間は確保できるだろう。

  とはいえ、人命が救えても、構築物の被害はまぬかれないので、その被害を極小化する工夫は必要だ。30メートル以上の高台には、最も重要な施設を配置し、順に、標高の低いところに、被災しても影響が少ない施設を置くようにする。そのための都市作りの基本ルールを決めておく必要があるだろう。

  沖縄振興審議会で進めている次期振興計画の案でも、3月18日の専門委員会で、都市計画・設計が専門の委員から、東日本大震災の甚大な被害に鑑みて、海洋に取り囲まれた沖縄を津波防災対策の手本となるべき計画を入れるように提案があった。7月に審議される最終報告案には具体的な都市づくり案は間に合わないだろうが、その問題意識は鮮明に盛り込まれることになると思う。

  災害対応地域としての沖縄が、新たな沖縄の姿になりそうだ。

これまでの掲載

中島情報文化研究所 > 執筆記録 > 美ら島大使 沖縄報告 > 津波被災予想を冷静に受け止める