8月1日、東京・青山で「イエラム サンタマリア」の商品発表会が開かれた。大勢の関係者が集まって盛大な発表会になった。「イエラム」は沖縄県北部の離島、伊江島(伊江村)で生まれたラム酒のことである。商品名が「サンタマリア」。もちろん、試飲会を兼ねているので、長い列に繰り返し並んでラム酒ベースのカクテルを3種類も飲んでしまった。「ハイボール」はそれなりのうまさだったが、ライム、ミントの葉をソーダで割った「モヒート」が抜群で、いっぺんにラム酒のファンになってしまった。
伊江島はこれまで泡盛工場がなく、「地酒のない島」だったそうだ。人口4700人強、飼育している牛の数は5000頭と牛の方が多い。かつては、内地のブランド牛の素になる仔牛として関西地域に送られていたが、トレーサビリティ(生産履歴追跡)が普及してから、「伊江島牛」としても売り出し、人気が出ているそうだ。落花生の産地、島ラッキョウの6割を生産す
るなど、農業島である。
もちろん、サトウキビの産地でもある。自動車のクリーンな燃料として植物由来のバイオエタノールが注目されると、サトウキビからバイオエタノールを生産する実験工場が伊江島に建設された。実験は2年前に終了したが、その工場を改装してラム酒の醸造所が作られた。沖縄の泡盛は「タイ米」を原料にしているので原料は輸入。これに対してラム酒は地元産のサトウキビが原料である。こちらの方が純粋に沖縄の特産品の資格があるかもしれない。
伊江村の大城村長や開発リーダーの青年は発表会で「跡地利用」という言葉を使ったが、バイオエタノールの実験は、見事に、「地元産のラム酒」という子供を産んだのである。本来の目的である自動車燃料用のバイオエタノールについては成果を聞かないが、「ご落胤」の方は立派に育って欲しいものである。
ちなみに商品名の「サンタマリア」は聖母マリアから借りた。沖縄に多数、自生する鉄砲ユリは別名「琉球ユリ」と呼ばれ、日本のユリ原生種15種の一つだそうだ。伊江島はその代表的な群生地があって、鉄砲ユリは伊江島を象徴する花となっている。このユリは、中世に琉球に渡来した欧州人によってヨーロッパに渡った。清楚な見かけが喜ばれて、復活祭などで聖母マ
リア像とともに飾られ、ほどなくヨーロッパ全体に普及した。
伊江島を象徴する鉄砲ユリがヨーロッパに普及したように、伊江島生まれの「イエラム」が世界に普及しますように、との思いを込めて、商品名は「サンタマリア」と決めたそうだ。
ラム酒が新しい沖縄の特産品になることを祈りたい。