“使い捨て”雇用を問う~働くものに明日はあるか 第3章

“使い捨て”雇用を問う~働くものに明日はあるか 第3章

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「派遣労働」に未来がある人びと

 「派遣」という勤労形態は、労働者にとって、それ自体は人によっては活用できる便利な仕組みである。会社に入って、組織体系の中で一つの機能単位として成長し、一人前になってゆくことも人生の生き方で、多くの人はこの道を選んでいるが、もちろん、人生はいろいろである。

 学者や政治家を志す人、ベンチャー経営者、歌手、俳優、芸能人、スポーツ選手、作家を目指す人、弁護士や会計士、税理士など有資格の個人事業主に挑戦する人など、さまざまな人生がある。職業だけではなく、若いうちに世界一周をしたいと志を持つ人もいる。世界の名山を征服したい人、社寺仏閣、教会を巡り歩きたい人、世界の不思議を解き明かそうと挑戦する人など、多彩だ。

 企業や官庁などのがっちりした組織の中に入ると、こうした、人生の目標を目指す人にとっては、目的を達成するために必要な時間を融通することが難しい。こうした志を持って人にとっては、「派遣」という勤務形態は魅力的である。普通のアルバイトに比べて、派遣事業者という「エージェント」がいて、働く人の希望の条件を聞いて、その希望に近いところを探して紹介してくれるのである。価値観が多様化した時代に必然的に生まれた勤務形態である。

 ――というのは、理想的に事が運んだ場合である。

 実態は、こうした志とは異なる、就職できない予備軍が大量にこの世界に入ってきた。別に志があるわけではないので、技能や資格をとる機会もなく、時間を空費し、会社組織に入る時機も逸する人びとが生まれてきてしまった。その数が目立って多くなってきたので、社会問題と化した。派遣や非正規社員を輩出するような仕組みは廃止すべきだという極論も出で来た。実際に派遣業全般を規制する動きも出てきている。その象徴として、は兼業で急成長した大手派遣企業は法令違反を摘発されて廃業に追い込まれた。

 しかし、派遣労働の従事者のアンケートを見ても、他の目的があるので、現在の仕事に満足している、という回答が半数近くに及んでいる。派遣に従事しているのが、その人びとの社会参画のすべてではなく、他にもっと大きな人生の目標のための活動を行っているのである。派遣問題を議論する人の多くが企業や官庁という組織に身を置き、その生き方に価値を置くので、派遣従事者の価値観が理解できないでいるのではないか。

 現在は、派遣労働に本来の目的ではない要因が紛れ込んで混乱している。ただ、その歪みを是正するのに急な余り、未来に夢を抱いて挑戦しようとしている人たちの便利な働き方を奪ってはいけないのではないか。

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