がんばれベンチャー育成
筆者は、3年前から、今回の紙面で取り上げたIPA(情報処理推進機構)の「未踏プロジェクト」の審議委員を務めさせてもらっている。審議の過程できわめて多数の多様な研究プロジェクトの一部ではあるが、その企画概要を読む機会がある。多数の応募者の中から絞り込まれた数十の企画の内容に触れるだけで、実に、精神の高揚を覚えざるを得ない。応募者のほとんどは10代後半から20代の研究者や研究者の卵たちだが、研ぎ覚まされた神経で時には奇想天外とも思えるような新しい領域に突入してゆく気迫には、大きな期待を抱かざるを得ない。
日本社会では、こうしたとんがった企画は受け入れられないことが常である。
「未踏プロジェクト」では、世間では受け入れられないような常識外れとも思えるものでも、プロジェクトマネージャーに選抜された先輩の経験者の方々のうち一人でも、「この考えは興味深いので」と、研究企画を引き受ければ、研究予算をつけて採用してきた。常識外れの発想の芽をつぶさずに、社会に通用する研究に彫り刻んでゆく作業をプロジェクトマネージャーが進めてゆくのである。
ただし、プロジェクトマネージャーの先生方は大学や研究機関の研究者なので、その研究成果をビジネスに結びつけるには、もう一つ、深い谷間がある。この深い谷間を越える橋を架けることができれば、数多くのベンチャーがここから輩出することができるだろう。組織的にベンチャー企業を輩出する仕組み作りが完成するかどうか、あと一歩のところまで近づいているようである。
願わくば、長期の時間がかかるこうしたプロジェクトについて短期の思考からあせらないことである。がんばれ、と声援を送るべきは、今走り続けている研究者、技術者だけでなく、ベンチャーを育成する資金や指導の提供者などの育成側かもしれない。「がんばれベンチャー育成」と声援したい心境である。