首都圏コンピューター株式会社という一風、変わった会社がある。元々は「協同組合」だった。組合員は、個人経営の自営技術者が加入資格である。企業に所属していたが、独立して自分で選んで仕事をしたい、と望むコンピューター技術者に対して、仕事の受注や請求事務、納税事務、債権回収、健康管理、新技術情報収集などを代行して個人事業者の弱点を補う「支援組織」である。独立志向の強い技術者を中心に加入者は急増してきた。新しい働き方を模索する技術者の層は厚かったのである。
2年前、組合員数が2000名近くになったころ、運営を見直して、「協同組合」から「株式会社」に移行した。「協同組合」は、時には犠牲を伴う「相互扶助」と組合員が同等の権利をもつ「平等」が原則である。組合が小さいうちは互いに顔が見える仲間だったので、組合の原則はうまく機能したが、組織が大きくなるに従って、運営は難しくなった。顔の見えないメンバーのために犠牲になる「相互扶助」は敬遠され、自分の利用したい機能だけを利用するメンバーが増えた。一部の人が犠牲的な献身をして、権利だけはだれもが平等を主張するのでは、長続きしない。
株式会社は、運営は機動的になる。共同受注・債権回収、税務書類の作成代行、健康診断、各種福利厚生など、個人事業主をサポートするサービスメニューは無料あるいは格安料金で豊富だ。受益者負担の原則で、メリットを感じる人が資金負担に応じて、優先的に組織を活用できる。従来の組合員は、概ね、新会社の株主になった。それとともに主要な「取引パートナー」でもある。
コンピューター技術者はその技術に応じて自立して働ける職種である。ネットワークさえつながれば、都会から離れた地方で、豊かな自然に触れながら好きな時間に集中的に仕事を進める請負仕事もできる。テレビ会議システムが発達してきたので、打ち合わせも詳細に可能になる。昼は畑仕事やサイクリング、ダイビング、地域の行事などで、夜は請負業務に取り組む、というような生活も不可能ではない。
そうした生活を選択できるように支援組織の充実や制度の改革も必要になってくる。自立する技術者がさらに増えれば、こうした社会的要求の高まりから、支援組織の強化、制度改革も進展するだろう。