第二次大戦後、百貨店は日本の小売流通の花形に躍り出た。戦前の百貨店は、おおむね、江戸時代の呉服屋に起源をもつ店が多かったが、戦後の大手百貨店は鉄道系が主力になって、老舗の呉服商系と競い合いながら大きく飛躍したのである。
90年代にそのピークが来たが、その後の時代の変化は急だった。「安売り」に発したスーパーの業態が米国から輸入され、着実に成長した。一時期、地域商店街の保護を目的にした大型小売店舗法の施行で足踏みをしたが、ピークを過ぎた百貨店業界は低落を始め、90年代にすでに百貨店の売上高はスーパーの売上高を下回ることになった。
さらに長期低落の勢いは急ピッチで、スーパーの後を追いかけてきたコンビニエンスストアにも差を詰められてきたが、2008年、ついに追い抜かれて、百貨店業界はスーパー、コンビニに次ぐ、小売業界第3位の業態に落ち込んでいる。
これで競争が終わったわけではない、コンビニの後ろを追いかけてきたのが通信販売である。注文を受けると生産者や生産者に近い販売会社から、宅配便を使って注文の商品を自宅に届ける。従来は新聞や雑誌による宣伝やカタログ雑誌で告知し、電話、はがき、FAXによる注文で市場を拡大して来たが、インターネットの登場で商品の閲覧や注文が簡単にできるようになって、成長速度は一気に加速された。流通業界の競争は、インターネット+宅配業者と既存流通の競争に進展してゆくことになるだろう。
もちろん、ネットワークで商品を閲覧する、と言っても、消費者は実際に物を見て、触って、香りをかいで、あるいは試食をして購入する、ということを捨てがたい。このバランスをどうするか。初めて購入するときは店頭で試してみるが、リピートオーダーはネットで十分、という購入形態が広がってゆくのも、複合的な流通サービスの一つの方式だろう。既存流通も単に正面から対決するだけではない。インターネット通販との協力や競争。まだまだ、さまざまな変転が続きそうだ。