改装効果は絶大~中古マンション販売の個人的経験
子供が幼稚園に入るのを契機に、付き合いの多い親戚の近くに、郊外型の小さなマンションを購入したのが、今から数えると32年前になる。8割のローン、頭金の一部も親戚に借り受けてのマンション購入だった。子供が私立の中学に入ったので、再び通学しやすいようにやや広いマンションを購入して引っ越した。
新しいマンションの頭金は古いマンションを売って用立てるつもりだったが、折しも不況の真っただ中で、購入金額の8割くらいから広告を始めたが、ほとんど反応がなかった。この間の物価の上昇などを考えると、8割というのは実質6割くらいの見当で、そこまで下げても売りないというのはショックだった。不動産会社の勧めで、8割を7割5分に、さらに1ヶ月後には7割に、さらに6割5分にと下げて、ついに5割近くにまで下げたところで不動産会社を変えた。
新しい不動産会社のアドバイスで、改装を行い、金額も購入額の2割高、つまり1.2倍で表示したところ、最初の週に5組が見学に来て、そのうちの1つに販売提示額の1割引きで販売できた。不動産会社への手数料、改装経費を支払った後でも、ほぼ、8年前の購入額近くで販売できた。改装の効果てきめんだった。
しかし、改装とともに販売提示額を大幅に引き上げたのも、希望額以上に販売できた理由だと思う。最初の不動産会社は、不況の折、多額の経費で改装しても、その分だけが負担になる、と、改装は勧めなかったが、その分を値下げでカバーしようとした。近隣の売り出しマンションよりも割安で、価格競争力を強調したのだが、後から思うと、購入希望側にとっては割安とは「わけあり」の事故物件ではないか、と警戒して、選考対象から外したようである。中古物件を購入する側に立った時、その心理に気がついた。
むしろ近隣よりも割高にして、それが納得できるようにぴかぴかに改装した。購入する側は一生の買い物であるから、納得のゆく品質を求めている。改装は、まさしく、価値を高めるための投資である。
最近、かつての居住マンションに知人を訪ねたが、一番盛り上がった話題は、32年前の購入金額に近い価格でマンションが売れた、ということだった。子供たちも巣立って家族が少なくなったので、転居する気持ちのない知人は「こんな古いマンションをね~」とあきれ顔だった。しかし、きっと中古には思えないほどに見事に改装したのではないか、と筆者は思っている。