シリーズ ニッポンの食卓 進化するデリバリー

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「宅配」を幅広く可能にするICT

 GPSと結びついた携帯電話やスマートフォンはデリバリさー、つまり、ICTベースの宅配サービスを劇的に進化させた。宅配ピザパイサービスが、指定された家や事務所ばかりではなく、公園での花見の場所やストリートミュージシャンの演奏を聴く駅前の広場など、場所を指定して注文をすることができるのだそうだ。これもGPSで場所を確認できるからのようだ。

 もちろん、予め登録した会員でなければこういうサービスは受けられない。昔の「出前」などでは、高価などんぶりものなどを多数注文して、届け先の家を困らせるなどという悪質ないたずらがあったが、注文を受ける側はこうした損害を回避しなくてはならないからである。また、会員制にすれば、おおむね、こうしたトラブルは防げるだろう。元来、「出前」サービスなどは、町内の顧客の事情を十分に承知している狭い地域の中で発展してきたものである。注文主の信用状況が分かれば、昔は「つけ」もきいたに違いない。

 現代のデリバリサービスは、インターネットでの注文が普通である。ポータルサイトにアクセスいて、配達可能地域にある店の中からメニューの中身を確認し、画面から注文する。予め決めたメニューなら、携帯のサイトからも注文できる。現在ではスマートフォンでパソコンに近い機能が利用できるので、外出先からスマートフォンで注文するのも簡単である。

 ICTを基盤にしたサービスは日常に着々と浸透しつつある。新しい需要を創造する産業ではなく、既存の市場を置き換える産業である。既存の産業は、こうした新しいサービスの台頭に合わせてビジネスの仕方も変えなければなるまい。寿司やてんぷらは、店の主人や女将と世間話をしながら食べるのも楽しみだが、それだけに頼っていると、いつの間にか常連さんがじり貧になってしまうのではないか。さびしい気はするが。

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