昨年、尖閣諸島の係争で日中の関係が悪化した時、中国からレアアースの輸入が止まった。たちまち「ハイテク日本」は危機を予感した。ハイテク製品に不可欠な原材料が調達できなくなる可能性がある。
しかし、1960年代からの高度成長以降、日本は資源輸入大国である。製品に組み込んで海外へ流出してしまったものや、燃料として燃やしてしまったものを除けば、その多くは使用済み製品として、国内に留まっているのではないか。たとえば、筆者の部屋にも、買い換えて使わなくなった携帯電話が4台もある。パソコンも廃棄物として処分せず、10台ほど残っている。今や骨董品となった日本語ワープロもむなしく4台ほど押し入れに収まっている。
おそらく、こうした家庭在庫が結構あるに違いない。これらの部品は回収して再利用の道がある。もちろん、そこにはレアアースが含まれていて、一つ一つは微量でも、集積すれば大量になるだろう。回収が難しいという記事を読んだことがあるが、これまでまともに回収方法が研究されていなかっただけのことで、まじめに回収方法の技術開発投資が行われれば、コスト安く回収できる方法など、問題なく開発されるだろう。その際に、これまでの膨大な家庭内在庫は分解し、取り出した部品から原材料を回収するための頼もしい宝庫になる。
いくつものリサイクル法が制定されて、日本国内では再利用するための基盤が整いつつある。これを新しい鉱脈として価値ある経済資源にする仕組みをさらに確固としたものにすべく産業界の努力を期待したい。不幸にして津波によって破壊された各種の機器の中にも豊富な資源が含まれている。この災害廃棄物も、日本にはない希少資源を、再利用によって「宝の山」に変えられれば、深甚な災害も少しは前向きにとらえることができるのではないか。