阪神淡路震災に学ぶこと

阪神淡路震災に学ぶこと

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 東日本大震災からの復興を議論する際に、こういう言い方はやや不謹慎だが、参考にすべき事例としてはどうしても阪神淡路震災の復興のプロセスに学ばなければならない。もちろん、地震の性格も、被災した地域の事情も異なるので、あくまでも参考だが、改めて阪神淡路被災地域の復興の努力には頭が下がる思いがした。

 特に、住民情報システムをベースにした西宮市の被災者対応行政のプロセスは、「住民のための行政」に徹した同市の職員の活動に感心させられた。市庁舎おも被災し、コンピューターも被害を受けて数日間、使用できない状態だったのを情報システム担当者たちの突貫作業で必要なシステムの一部を回復させた。当初は、紙ベースで被災住民に対応して 各種の手続きは長蛇の列を作った。一つの申請に7時間も8時間も並ばなければならない事態も生じた。それを情報システム普及後は、住民情報システムをベースに次々と受付が進 み、被災者の避難施設、移動、食料配給、負傷などの治療過程、就職、市外への移転や転入など、住民のさまざまな行動や要望などを記録して行き、次の施策を展開していった。

 それにつけても、最も重要だったのは、住民情報だったという。すべての基本は住民情報で、その上にさまざまなデータを重ねてゆき、15年以上経過した現在でも被災者の状況を把握するのに利用しているという。東日本大震災では、地元自治体の住民基本台帳が失われ、初期の住民対応に混乱が生じた。住民情報は住基ネットの管理システムの中で一部 の複製を利用することはシステム的には可能だが、目的外使用に当たる恐れもあるということで、宮城県、岩手県は直ちに条例を変えて利用できる体制を整えたが、そもそもこう いう事態に備えて地元自治体以外のところでバックアップ保管をして、非常時に活用すべきなのである。

 それが過度な個人情報保護の主張によって、住民情報はわざわざ利用しにくいように制度上の縛りを作っている。住民情報は災害時の被災者救援の重要な基礎である。東日本大震災では、義援金がまだ配付されていないなど、わけのわからないことがあちこちで起きているが、情報システムの活用にどこか欠陥があるように思われてならない。

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