日本産業界の成長能力を阻害しているのは「大企業」なのではないか。日本経済新聞の記者時代から筆者もその考え方に傾斜していた。1980年代、日本の経済成長を支えていたのは「大企業」の「馬力」だったが、その馬力の中に、「大きいことは力だ」という「信仰」が根付き始めていたからだ。
海外でヒットした商品を日本市場にアレンジして売り上げを上げる、あるいは日本の中堅企業や中小企業が発明した新製品が有望と見れば、その製品に付加価値をつけて大規模に販売すれば、リスク少なく、ヒット商品を生み出せる。市場の未来が見え始めたところで、大量生産、大量販売で市場を席巻する。こういう「2番手商法」が大企業の商品開発の方法として定着した。もちろん、創造的商品を発明する大企業もあったが、当時、多くの大企業はこうした手法で業績を上げた。大企業は多くの部門で数多くの商品を発売し、その担当者たちは激しく競争している。社内のライバルに負けないために、手っ取り早く「2番手商法」に頼ったと思える。
大企業は成績優秀な就職での「勝ち組」の人材を集める。これらの人材は、失敗せず、確実にポイントを上げることで、着実に出世して「社内勝ち組」として、商品開発部門の中心を占めてゆく。当然ながら「社内勝ち組」は、自身の出世した手法が成功ノウハウだと思うので、この「2番手商法」を強調する。
この結果、不幸なことに、大企業の社内で、独創的な発明品の登場を阻害し始めた。前例のないオリジナルな発明品が新製品の候補として会議に上がってくると、「前例がないので市場予測ができない」として却下されるのである。「現在、市場がない」というのが却下の理由だが、「前例がないから商品化できない」というのでは、独創的な商品を求める果敢な人材は大企業では生きられなくなる。
その中で曙光となるのは、こうした大企業をスピンオフして、発想の自由なベンチャーである。今回の番組は、日本産業界を再び浮上させる可能性のある「芽」を感じさせる。心強い番組である。