ASP・SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)育成への経済産業省、総務省の先陣争いは急ピッチで展開されつつある。総務省が一歩リードして始まったが、経済産業省も若干出遅れながら「SaaS・ASP利用促進協議会」をスタートさせて、とりあえず、ASP・SaaSのサービスレベルを測定する基準の検討に入っている。この付近は、産業育成策作りでは経験の深い経済産業省らしく、具体的に急ピッチで作業が進んでいる。
もちろん、経済産業省、総務省とも、協議会を作るのが最終ゴールではない。協議会を通じて業界の実態をつかみ、その必要とする産業育成の方策を打ち出すのが当面の目標である。産業育成には、補助金、税制優遇、優良事業者の認定による利用者の誘導策などがあるが、本命は補助金になるだろう。
というのは、それ以外の政策は新市場育成には不適切な面があるからだ。たとえば事業者認定。揺籃期である現状で、優良事業者を選別するような必須項目を作りすぎると、立ち上がり時期で十分に体制が整わないベンチャー企業などはふるい落とされるほうに選別されて、結局、革新的なアイデアを持つ市場開拓のパイオニア的企業に大きな壁を作ることになりかねない。ユーザーへの利用目安程度のものをつくるのが精一杯ではないか。
税制優遇でも同様のことが言える。事業者側に税控除の優遇措置を設けても、そもそも新サービスをスタートアップしたばかりの企業は税金を支払えるほどの利益が出ない可能性があるので、効果はまったくないかもしれない。一つの方法は、ASP・SaaSを利用する側の税制優遇であるが、これも、中小企業の多くは税金を納めていないので、効果があるかどうかは検討が必要である。
残るは直接の補助金である。経済産業省も、総務省も来年度予算に向けて、どのような補助金が有効か、具体的な検討を始めている。ソフトウェア会社としては、この補助金政策の行方を十分に注意してみておかなければならない。ソフトウェア産業の育成に効果ありそうな補助金制度のアイデアが出たとしても、財布を握る財務省の担当者が首を縦に振らなければ制度は成立しない。緊縮財政の中でどこまで通じるか。ただ、内閣府を中心に日本のIT革新の後れを打開する有効な手段はASP・SaaSである、という合意はできつつあるので、望み薄いわけでもない。ここしばらく、注目しておいてもらいたいものだ。