朝青龍である。夏の巡業を「腰の骨にひびが入っている」という診断書で欠席する承認を得た彼が、故郷、モンゴルに帰ってサッカープレイに興じていた。そのフィルムを見る限り、球を追って全速力で走り回り、ゴールに球を蹴りこんで躍り上がって喜んでいた。球を追いまわして激しく転倒する場面もあったが、特に腰をかばうわけでもなく、痛がるわけでもなく、健康そのものである。
こういう状況を普通は「仮病」と呼ぶ。仮病を使って会社の重大な行事をサボったこと疑いが発覚したら、皆さんの会社ならどうします? まず、診断書を作成した医師に事情を聞くべきではないですか? そもそもの出発点はそこからです。モンゴルに行ったら腰のひびが回復した、などという説明は、仮に
行われたとしても誰も信じまい(そんな説明もされていないのは、だれもが仮病だということを認識しているからか)。
にもかかわらず、朝青龍が帰国させられた後の周辺の対応は奇妙だ。朝青龍に事情聴取があったとも聞かないが、従って、休養中にモンゴルでサッカーをしていた、ということについての処罰として、朝青龍の2場所出場停止の処分、それにショックを受けたとかで主治医だの協会所属の医師だのによる「精神的に参っている」というだけの、専門医とも思えない診断結果である。
問題を混乱させては困る。現在がどういう精神状況にあるかではなく、仮病で重要な行事を「ずる休み」したということがまず処分されるべき対象である。その処分が2場所の出場停止で済むのかどうか。
社内でこういう事態があったら、新入社員ならば減俸。中堅社員ならば、譴責ないし停職。幹部社員ならば反省内容次第で停職、反省が不十分ならば懲戒免職に相当するだろう。医師も巻き込んで診断書付きの「うそ」を行う人間はコンプライアンスをいくら叩き込んでも、改善するとは思われない。規律は根本から崩れるだろう。しかも、こういう人が、人徳とも最高を要求される「横綱」であることは許されるのだろうか。これは日本相撲協会の存続にかかわる重要な事態だと思うが、考えすぎだろうか。
コンプライアンスが求められる厳しい企業の環境の中で、こういう白昼公然の「仮病社員」をどう取り扱えばよいのか。