注目したいのは、「年金未納」を指摘されて官房長官を辞任した福田康夫氏が次期首相に当確となったことです。
正直に言って、政策全般には、あまり期待できないのではないか、と割り切っています。安倍、麻生、福田3氏は、祖父または父親が首相を務めたという輝かしい「血統」があるので、うっかり、その先代、先々代の実力を二重写しにしてしまうのですが、それが幻想だったことは「アベちゃん」が示してくれました。若いうちから、その「血統書」付きの政治家に野心家たちが取り入って、物事の正確な判断をゆがめてしまっているような気がします。
事実、福田氏は官房長官の経験以外に政治の最前線にいたことがないので、「経験不足」が心配です。本人もこの千載一遇の時まで自ら積極的に打って出ようとしなかったのも本質的には自信がなかったからかもしれません。もっとも、前首相のように過信ばかりで内実が伴わなかったのに比べれば、その謙虚さが成功を収める鍵となるかもしれませんが。
さて、注目したいのは「消えた5000万人分の記録」を福田新首相がどう取り扱うか、または黙殺するか、です。福田氏は社会保険庁から「未納」と指摘されて、あっさりと官房長官を辞任したのですが、いま、大問題になっているのは、その社会保険庁の記録が正確でない、どころか、全く出鱈目だらけだということです。本当は支払ったはずのものまでが社会保険庁に記録がない、ということが大規模に明らかになったことで、まじめに支払ってきた多くの国民が「未納」と認定されていることです。福田氏はその権力を行使して再調査し、「名誉回復」のチャンスもあるはずです。また、それをすること自体が、もしかすると、5000万人の記録を回復する手がかりをつかむことになるかもしれません。
ついでに言うと、筆者は、年金記録は「消えた」のではなく、記録が残っていると困る人たちが「意図的に消した」のではないか、と疑っています。市町村窓口での横領や保険庁職員の不正、また各地に無駄な施設を適正かどうか不明の金額で建設して、赤字だからとさっさと売却してしまう、など、正確な記録が残っていると困ることが、この保険庁の仕組みの中には膨大に隠れています。こういう疑惑を一挙に消すには、記録そのものを「消す」ことが最も効果的な手段ではないかと想像できます。
福田氏が自らに降りかかった過去の問題を蒸し返して、保険庁の暗部にもう一度メスを入れなおしてくれるかどうか、それが自民党への信頼回復の大きなステップになると注目しています。