情報技術は「さんご」を救えるか

情報技術は「さんご」を救えるか

 横尾良明最高顧問が住民票を移し、首都圏ソフトウェア協同組合とも縁の深い宮古島で一つの実験構想が推し進められている。「ユビキタス」のICT環境を活用して、さんご礁の観察を広域で行い、「白化」などのさんご礁被害の拡大を防げないか、早急に検討しようという実験の構想である。

 宮古島で、海の自然を守る新しい発想のダイビングエクササイズや浜辺を使った癒しのウオーキングを提案している猪澤也寸志さんらが、沖縄周辺海域で近年、顕著にその被害が観察される「白化」の事態を深刻に受け止め、何とか、対策を打てないか、検討しているものである。

 水中カメラやセンサーを海中に設置してさんごのリアルタイムの映像、環境情報を採取して、これを高速インターネットによって大学など遠隔地にいる専門家の研究室に送りモニターする仕組みである。多数の地点に観測地点を設けるが、その情報は広域無線LANで転送する。有線回線を敷設しなければならなかった時代ならば観測地点の数を制限しなくてはならないが、ユビキタスを実現する無線環境の利用で、多くの地点からデータが集積でき、研究スピードも短縮されるだろう。対処策も機動的に打てるとともに、その対策の研究もスピードアップすることが期待される。

 スイスの経営研究所、IMDの評価によると、日本社会の国際競争力は先進国中で24位、前年より7位も後退した。ユビキタスのインフラは整備されているが、それを有効に活用していない実態がマイナスポイントとされ、ランクを大きく引き下げられたと指摘されている。電子行政、経営情報システム、中小企業のICT利用、教育現場など、活用が後れている分野は数え上げればきりがないが、いずれも「既存抵抗勢力」の壁が厚く、なかなか突破するのは楽ではない。しかし、地球環境維持や自然保護という人類が直面する分野にユビキ
タスインフラを活用する、という運動が実現すれば、世界の日本への評価は大きく変わるだろう。「尊敬される国家」としてのポイントは上がるに違いない。

 あの手この手で、ユビキタスの普及を促進しなければならない。

 猪澤也寸志さんには、ぜひ、この実験を成功させてもらいたいものだ。筆者も、その支援を続けてゆきたい。

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