賀詞交換会の講演で経済産業省の村上敬亮企画官が展開した日本のソフトウェア産業を展望する議論が最近、頭の中にこだましている。村上企画官の展望は一言で言えば「SIヤー衰亡論」である。10年後を考えるとソフトウェアを供給する専門会社としてのSIヤーは仕事をなくしてしまうのではないか、とい
うものだ。この議論を聞いた直後は、あまりに刺激的な議論で、全体の産業論の中で位置づけが難しかったが、時間が経過し、反すうするうちに徐々に飲み込めるようになってきた。
議論全部を理解しているわけではないので、理解は依然として断片的だが、記憶に残っている中で有力な論拠となっているポイントは、日本のITはユーザー企業と一体化してゆくことで価値を高めてゆくということである。コーディングのような川下の作業はどんどん自動化が進むか、あるいは賃金の極端に安い途上国に譲ってゆくとすると、日本のソフトウェアの競争力は、国際的に強い競争力を維持するものづくりの産業と一体化してゆかなければならない。つまり、情報技術はよりユーザーに近いところで、ユーザー企業と一体となって開発されて行かなければならない、という道筋になる。
この進展プロセスに伴って、情報システムの開発者は再びユーザー企業の中に取り込まれてゆき、外部から技術を提供してきたSIヤーやベンダーの関与が薄れ、従って、存在価値が失われてゆくというシナリオである。SIヤー全部が消滅するというわけではなく、生き残れるSIヤーは4、5社に絞られるという構造変化が起きるというわけだ。
もちろん、事態はこんなに単純ではなく、村上企画官の議論ももっと奥深いものだったが、この単純すぎる議論だけでも、ソフトウェア産業の裾野に位置するメッサの組合員企業にとっては衝撃的な話である。
同様の議論が、3月10日夕方、首都圏コンピューター技術者株式会社が開催する記念セミナーで話し合われることになりそうだ。組合から株式会社への大胆な組織転換と8社の合併を経て昨年末に誕生した同株式会社をお祝いするために開催されるが、そこで、日本オラクルの新宅正明社長、フューチャーアーキテクトの安延申社長、コムチュアの向浩一社長、同株式会社の横尾良明会長らがパネリストになってソフトウェア産業の生き残り策を論じることになっている。村上企画官の議論も、おそらく司会役の中島洋から問題提起され、これらの論客の間で議論されることになると思う。
ぜひとも、このセミナーに注目してもらいたい。