市場の大きさ、富裕層の分厚さ、ITを中心にした国際競争力など、多くの角度から見て中国という国は間違いなく大国に成長した。石油の輸出国だと思っていたら、国内の火力発電やガソリン需要の爆発で、いつの間にか石油輸入国に転じた。毛沢東革命の強烈なイメージから、農業主体の国だと思っていたら、穀物も世界から買い集める農産物輸入国になっている。市場が大きいというのは、巨大消費国として世界経済に新しいポジションを得つつあるということである。しかも、その「巨大さ」たるや半端ではない。
今日、石油価格の高騰、穀物価格の高騰にはさまざまな要因が働いているが、中国の巨大な消費需要がインパクトを与えているのは間違いないだろう。第二次大戦後の日本の経済成長も奇跡的だったが、せいぜい人口1億の消費である。米国の成長も人口2億の話である。ところが中国は世界市場規模の20%を占める13億人の話である。その成長、成長の足踏み、ともに、世界経済に強烈なインパクトを与える。
そのすぐ後ろにはインドが同様の急速な発展をしようと身構えているが、中国の場合は北京オリンピックを控えて、成長が過度に加速されている。その勢いがオリンピックの興奮とともに一段落したときに、世界経済は「肺炎」に冒されないか。
ソフトウェア産業は特に開発の依存関係によって中国と一体化が進んでいる。オリンピック後の中国経済の動向に、ソフトウェア産業が影響を受けないでいられるか。経済が減速したときに、現在は目をつぶっている都市と農村の格差や貧富の格差などの矛盾が噴き出て、世情が不安定にならないだろうか。社会不安からソフトウェア産業を守れるか。マイナス思考になると、あれこれ不安が出てくる。経営とは最悪のリスクも織り込んで準備をしておかなければならない。こうしたことが杞憂に終われば良いのだが、リスク管理もまた、考慮しなければならない。20世紀終盤には予想もしなかったほどの勢いで中国が発展しているので、その反動がまた怖いのである。