富士通が7月下旬に発表した環境活動報告を見させてもらった。その中でいくつか驚いたことがある。計算の尺度をどこに置くかで様子が変わってくるのかもしれないが、とにかく、前倒しで目標値を達成している項目がいくつも見られるのである。
その典型的なものが「地球温暖化対策」としてのエネルギー消費CO2削減の項目である。グローバルな目標として、実質売上高CO2原単位を2010年度末までに1990年度実績比で28%削減と設定していた。それが2007年度では90年度実績比で68.4%も削減するという実績を記録した、と発表されている。実質売上高とか、CO2原単位とか、この辺に何かトリックがあるのではないか、という一抹の不安は残るが、単純に受け取る限りでは、前倒しで、目標値を大幅に上回る達成結果だ。
元々、目標値が低すぎたのではないか、という疑問もあるが、2010年度までに28%削減というのは、そもそも業界で取り決めた目標値だったそうだ。他の企業でも前倒しで改善が進んでいるというので、業界目標値は34%削減にまで引き上げられたそうだが、それにしても、68%強の削減という富士通の実績はすごそうに見える。
ただ、国内事業所での排出総量という観点から見ると、まだ、努力の余地があるようにも見える。目標としては国内事業所でのエネルギー消費CO2を2010年度末までに1990年度実績値以下に抑制することだった。しかし、07年度実績としては10.8%の増加。まだ、10年度までは3年残っているので、富士通では目標通りと見ている。むしろ、07年度の目標として掲げていた14%増加に抑制する、という数値に比べれば十分に目標は達成していると見ている。そうは言っても、グローバル目標に比べると達成実績は前倒し幅が小さいとはいえるだろう。
ITはそれ自身がエネルギーを多量に消費するので、とかくに槍玉に挙げられがちである。CO2排出量を削減する努力とノウハウの蓄積が必要だ。その過程でIT活用のノウハウを獲得し、ソリューションとして一般企業に提供するのが、もう一つのIT業界の責務である。富士通の動きを見ると、その方向に着実に進んでいるのが分かる。ここで安心せずに、さらにもう一段、頑張って、人類の存続に貢献していただきたい。