仲井眞弘多沖縄県知事が「これで冷えたパイを食べなければならない状況から脱け出せる」と挨拶した。14日、那覇で開かれた「日経新聞沖縄印刷祝賀パーティー」でのことだ。これまで日経新聞は東京で深夜に印刷した新聞を朝一番の飛行機で那覇まで運び、これを受け取った配達委託先の琉球新報が、夕刊と一緒にオフィスや自宅に日経新聞朝刊を届ける、という仕組みだった。冷えたパイとは、すでに新鮮さを失った朝刊掲載のニュースのことである。
これまで沖縄に進出する企業にとってのネックは情報の遅れだった。日経の朝刊が地元紙の夕刊とともに届くので、沖縄に転勤した幹部たちのビジネス活動が半日から一日遅れることだった。一日近くあったビジネス情報のギャップが解消される。これで「沖縄は本土並みに企業活動ができる」(仲井眞知事)というわけである。
逆に「沖縄発の全国ニュース」の期待もある。従来、日経新聞にとっての沖縄支局は基地がらみの政治・社会ニュース取材の場所だった。駐在は支局長1人。社会部(たまに政治部)の記者が駐在する「出先」に過ぎなかった。今回の沖縄印刷を契機に支局長のほかに1人増員。支局長は日経を代表して地元の行事に参加する「渉外」機能もあったので記者活動以外の雑事に時間を費やされる。一人前の記者活動はできなかったので、経験のない経済記事や産業、企業記事には手が回らなかった。沖縄企業・産業のニュースが全国に発信される機会はほとんどなかった。
今度は、企業取材、産業取材の経験がある支局員の増員で、地元の有力企業、成長企業のほか、沖縄進出企業の活動が伝えられることになる。コールセンター、BPOセンターなど、沖縄に進出している本土企業の動静も伝えられることになるだろう。ようやく沖縄が日本経済圏に組み込まれることになる。
われわれの同志、沖縄県のソフトウェア開発企業の有力商品の動静を伝えるニュースが日経新聞、日経産業新聞、日経MJなどに登場する日も近いだろう。沖縄経済界は「日経新聞」が呼び寄せた本土の風を追い風にしようと活気付いている。メディアが地域経済に与える役割の大きさを改めて実感した。これをソフトウェア産業の活性化にどう結びつけるか。次の課題である。