新政権への注文

新政権への注文

 まさかと思った、投票日直前のマスメディアの総選挙結果予測が、ほぼ当たった。31日に東日本に近づいて大雨をもたらした荒天が、もう一日早かったら結果はかなり異なっていたかもしれない、という人もいるが、そういう「もし・・・・ならば」は、今となっては意味のない議論だろう。現実は歴史的大差をもって、政権交代が行われることになった結果である。政権交代の原因になった現政府の行き詰まりだ。野党陣営に投票した選挙民は、行き詰まりの打開を、新政権に委ねたいと決断したわけだ。

 ソフトウェア開発を中心にした情報サービス産業も行き詰まっている。その打開策は、これまでの行政とのやり取りの中で、なかなか見いだせないままである。新政権になって急に打開策が見いだせると期待するのは過剰な期待だろうが、心を新たにしてもう一度取り巻く環境を点検してゆけば、登り口を発見するチャンスはあるかもしれない。

 ただ、政治の側に任せればよい、というわけでは全くない。産業界の側から、いくつもアイデアを出さなければ、事態は動かないだろう。幸い、今回の政権には、通産省・経済産業の情報産業分野担当だった官僚出身の若手・中堅議員が多数、政策立案のための勉強をしようとしている。選挙区に密着して運動してきたわけではない落下傘議員も多く、地元や業界の利権とは距離を置いて、日本の将来ビジョンから現在の業界の問題点をあぶり出すことができるのではないか。

 そうであれば、ここしばらくは新政権が何を実現できるのか、あれこれ要望を出して、試してみるべきだろう。マニュフェストには載っていない事柄を、産業界の側で補強してゆくべきではないか。メッサは従来、政権政党にではなく、監督官庁に直接、要望を伝え、意見をうかがってきた。歴史的には前例のない事態が訪れたのだから、新しい手法で産業界の意見を開陳すべき状況になったのではないだろうか。だからこそ、われわれ産業界内部で、現状分析や将来展望をきちんと議論しておく必要がある。

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