高速道路料金の無料化について賛否の議論が起きているそうである。輸送事業関係の団体は、多数の乗用車の流入によって高速道路が大混雑して渋滞し、専門の事業者の輸送業務に支障が出る恐れがあると、反対を表明する。高速道路や海峡をまたぐ大橋と競合するフェリー海運事業者も、競争できずに廃業に追い込まれる、と反対を表明する。高速を利用する長距離バスも渋滞に巻き込まれてダイヤ通りの運行が困難になるだろう。
旅行経費の節約のためにあえてエネルギー効率の悪い自家用車による長距離移動を選択する旅行者が増えて、ガソリン使用量を増大させ、炭酸ガス排出量を増やすことになる。地球にとって優しくない。使用する自動車の増加によって道路の傷みが早まるのではないか。その負担を料金収入がなくなれば税金で負担しなくてはならない。受益者が負担するのが本当ではないか。
あまり表だった反対は見られないようだが、鉄道や航空機にも影響はあるだろう。現に、連休やお盆などの鉄道、飛行機の旅客のピークの時期にも、今年は例年ほどの混雑は見られず、収入が落ち込んだようである。
もちろん、渋滞を招くような事態を回避し、ガソリン使用量を抑制し、さらに大型車に一人で移動するなどというような非効率な運転を慎むように工夫をする必要はある。しかし、たとえば一定の日には、プレートナンバーが偶数の場合には自家用車の高速道路使用を自粛させるなどの新ルールを作って抑制を図る、というような工夫で、渋滞を緩和させるなどの仕組みもあるだろう。こうして渋滞が緩和できれば、高速料金が安くなった分だけ、長距離の輸送コストが下がって、物価の低下にも貢献するだろう。炭酸ガス排出の問題は、カーボン・フットの測定などによって輸送による炭酸ガス排出負荷を「見える化」して短距離輸送の仕組みを促進するなどによって解決することもできるのではないか。
いずれにしろ、ITインフラをベースにして、渋滞を回避するシステムを開発し、炭酸ガス排出量を減らすシステムを開発するという大きなニーズが待ち構えていることは確実である。高速道路無料化は現在の状況ではメリットより
もデメリットが強調されている。だからこそ、これを解決するための情報システムの開発需要が大きくなる。それがうまく機能すれば、高速道路無料化は、情報サービス業界にとっても「善政」になる。利用者、さまざまな競合事業者にもメリットになるような情報システムを構築して、「善政」に転換できるか。しばらく、解答はお預けということか。