大手コンピューター会社の中では比較的元気に回復に向かっていると思われていた富士通で突然の社長交代が発表された。野副州旦社長が病気療養のために辞任し、間塚道義会長が社長を兼務するという内容である。9月25日、連休の谷間の金曜日12時少し過ぎに筆者のところにメールが届いた。午前に開催された定例の取締役会に緊急に諮られ、承認された、という。
午後7時に記者会見が開かれたが、不思議な内容だった。辞任した野副社長は「体調のために会見は欠席した」とのことで、間塚新社長のほかは広報室長と人事担当執行役の2人だけが出席する重苦しい雰囲気の会見だった。
まず、突然のことだったので、間塚会長が社長を兼務して、野副社長が取り組んできた改革を進める、というのだが、決然とした語調ではなく、文章を読み上げるような弱い調子である。定例取締役会の直前に野副社長が会いに来て、病気療養のために社長を辞任したいと申し入れがあったそうだ。会長が社長を兼務するというので、「新社長の抱負を」という質問も出にくい。
「プライバシーの関係で病名は差し控えたい」というのだが、「病名は聞いているが、この場では公表できない、ということか」との質問に、間塚会長兼社長は「病名は聞いていない」との返答である。「今日以外で最後に会ったの
はいつか」との質問には、「(19日から23日までの)シルバーウィークの直前に、業務の打ちあわせで会ったが、その際には、元気で、突然に辞任する様子はなかった」という。
元気だった社長が連休明けに突然、辞任を申し入れてきて、慰留することもなく、直ちに取締役会で承認するというのも納得のゆかない話だ。通常は病気療養中は代行を置いて業務は執行し、回復後、社長に復帰するプロセスをとるものだ。すくなくとも、病気の様子をしばらく見て、辞任を承認するのは次回以降の取締役会でも十分である。
病気が何であるかは聞いていないままに、即日の辞任を認めるというのは、多数の従業員、取引先、株主を抱える超巨大企業の役員会が取るべき決定ではないし、それを申し出る社長というのも無責任というしかない。
当然、病気以外の本当の理由があるに違いないが、それは、野副社長が社長の職務を遂行できない、と感じる事情であると推測するのが普通である。社内の意思が一致しない、決定的な何かがあったのだろう。その問題を抱えながら、しばらく、富士通は平常心で航海を続けられるのだろうか。心配になる。とりあえず、本当の辞任の理由は何なのか。どうも気になる。