官僚主導の情報通信審議会の行方
2009年10月16日
筆者も、これまでにたくさんの審議会や政府機関の委員をしてきた。中には、所轄官庁の官僚がすでに構築した施策をオーソライズするだけの形だけの審議会もたくさんあった。しかし、方向性は官僚が決めたものの、内容については衆知を集めて作り上げてゆきたいという審議会もあって、激しい議論が飛び出してスリリングで興味深いものも少なくなかった。
情報通信審議会は、委員になった経験がないが、これまでの事情を周辺から聞いてみると、どちらかと言えば前者、優秀な総務官僚がシナリオを描き、審議会の議論は、最終的に結論に反映されているかどうか、疑問である、とのことである。
原口総務相は、この情報通信審議会は実質的に廃止して、新たに「次世代ICT戦略タスクフォース」というような組織を発足させることを考えているらしい。その座長には元三井物産常務の寺島実郎日本総合研究所理事長が就任するのではないか、とうわさされている。放送と通信の融合、NTTの経営形態や新市場創造へのシナリオなど、従来の視点とは違った戦略を作り直す考えのようだ。
この分野ではかつて竹中平蔵総務相が、懇談会と称する私的組織を創設して、審議会を飛ばしてかなり偏重した議論を展開してきたが、これを白紙に戻して、正常化することは歓迎すべきことである。さりとて、官主導だった情報通信審議会に議論の場を戻すのは、別の意味で問題である。名前は「審議会」と元のままでも良いが、「次世代」とか「タスクフォース」とか、新味を感じるようなニックネームを付け加えてもらいたい。
海外から引き離されてしまった「情報分野」を、インフラとしては先行した「通信分野」がサポートして、総合力で日本復活を実現する「タスクフォース」にしてもらいたい。