日本の国家戦略に立脚した事業仕分けを望む

日本の国家戦略に立脚した事業仕分けを望む

 慶應大学の村井純教授が委員長をしている「J-KIDS大賞」の表彰式が14日の土曜日に東京新宿の損保ジャパンで行われた。グランプリには広島県の尾道市立土堂小学校が選ばれた。インターネットにある小学校のホームページを閲覧し、およそ1000人のボランティアが参加して優秀校を選抜する表彰制度で、今年7回目である。筆者も第一回の6年前から選考委員を務めている。第一回は1万2000校だったホームページをもつ小学校の数が、今年は1万9000校弱と、85%以上の普及率になった、と報告を受けて、感慨深いものがあった。

 後援の経済産業省からは東条吉朗・情報処理振興課長、総務省からは平林正吉・情報通信利用促進課長、文部科学省からは齋藤清加・学習情報政策担当参事官、協賛企業のマイクロソフトから樋口泰行社長らも参加して、にぎやかな表彰式になった。

 ここでも話題になったのは、「事業仕分け」である。小学校にホームページを普及させて児童のITリテラシーを底上げしようという、この賞には影響がないか、などと冗談を交わしあったが、元々、後援の官庁からは資金は出てい
ないようで、もっぱら、損保ジャパンをはじめとした企業の浄財で支えられているため、全く影響はないと安心した。

 ただ、多くの参加者が首をかしげたのは、スーパーコンピューターへの補助金のカットである。スーパーコンピューターの開発は最先端の技術開発によって、その技術がIT業界に波及する効果が大きく、単に、スーパーコンピューターの問題に留まらないだろう。このところ後退している日本のIT産業の技術力に活を入れ、底上げを図るには重要な事業だろうという気がする。

 ITを今後の戦略的産業として、もう一度、前面に押し出すことを考えるならば、事業仕分けにもそれを反映してもらいたいものだった。極めて残念な事態である。小学生のホームページの目を見張る成長ぶりと対比して、やや、暗い気持ちになった。

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