「グーグル問題」を冷静に考える

「グーグル問題」を冷静に考える

 グーグルが中国から撤収すると、マスコミは報道している。グーグル本社の声は聞こえてこないので、なかなか本質は分かりにくいが、米国政府が乗り出してきそうなニュースに触れると、いささか憂慮せざるを得ない。グーグルが問題にしているのは、どうやら中国かららしいグーグルに向けてのネットワーク攻撃についてのようだ。この点であるとするなら、手順として、まず、ハッカーを刑事罰に定めている中国の警察当局に提訴するか、営業妨害で商務部に提訴する必要がある。それでもなお、対応が不満だというならば、外交問題にすべきだろう。いきなり、米国政府がコメントする、というのは、冷静さに欠けた動きである。

 日本では殺虫剤混入の餃子問題があった。これは日本で起きた人命にかかわることなので、当初から日本は政府が中国に掛け合った。その後の当該企業を守るかのような中国政府の対応には不満が残っている。初期の段階で、日本へ責任転嫁しようとした動きのために時間を無駄にし、この間に、当該企業は倒産して事件はうやむやのうちに終わってしまいそうな気配である。こういう態度が予想できるので、最初から米国政府を頼ったと、もし、言うのならば、独立自尊の意気盛んなグーグルらしからぬ行動とがっかりさせられる。

 我々は、まだ、数年前までの古い中国の社会をイメージする先入観から抜け出ていないような気がする。中国の急進展は、経済統計、インターネット普及の統計、自動車販売台数が世界一になった、というニュースなどを見て、十分に承知のはずだ。経済的に富むことによって、生活観、価値観は大きく変わってくるはずだ。これまで「コピー天国」と言われた中国がこのまま続くのか、それとも、今度は守るべきものが多くなって、知的財産権を厳格に運用する社会に転換するのか、これは十分に観察して見極めなくてはならない時期に来ている。

 政府内部で政策転換が起きても、新しい生活感や価値観が根付くには時間がかかる。すぐには社会全体に浸透はしまい。従って、情報産業分野でも、知的財産権にかかわるような中国との付き合い方は、なお、慎重を要するが、中国の制度が変化しているならば、それを十分に研究する必要もある。中国は10年も経てば、日本の2倍、3倍の経済大国になっているかもしれない。その時には、現在とは付き合い方が違っていることは確実である。従来のイメージに固執せず、柔軟に、中国を見る目が必要である。その意味でも、われわれよりも中国をよく知る、台湾の皆さんとの付き合いは一層大切になる。

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