先日、沖縄県庁の依頼で、那覇市で開催された「クラウドセミナー」に基調講演とパネル討論の司会役で出席してきた。沖縄で「クラウドコンピューティング」の関心がにわかに高まったのである。背景は2年前の議論にさかのぼる。
2年前に沖縄県にIT産業の集積団地を建設するということで、座長として「IT津梁(しんりょう)パーク」の建設構想をまとめたが、最終的に候補地が沖縄本島中部の中城湾を埋め立てた工業団地予定地(予定通りに企業誘致が進まず空き地になっていた)を使用することが決まった。海岸の埋立地ということで、地盤の関係から、集積すべきIT企業をコールセンター、BPOセンター、デザインセンターなどのオペレーションセンターや管理業務に限定して、データセンターを候補から外すことになった。
しかし、中国の急速な経済成長で、日本企業は「巨大消費市場」として中国を再認識し、新たな中国進出の計画を練り始めている。その際にアジアの製造業や事業所を遠隔からコントロールする拠点として沖縄の存在価値がクローズアップされ始めようとしている。沖縄にデータセンターがもっと欲しくなるだろう。一度は津梁パークの候補地としても検討した丘の上の用地を、今度はデータセンター専用として整備できないか、と、蘇ってきたのである。
従来は、日本の主要都市から最も遠隔にあるという理由から、ディザスターリカバリー(DR)や事業継続計画(BCP)の観点で沖縄はデータセンターの基地として注目された。後方で守備をする「補完」の役回りだった。今回は違う。アジアや中国へ日本経済が広がってゆく最前線基地としてのデータセンター建設構想だ。その際には沖縄にデータセンターをサポートする情報産業の発展が期待できるだろう。今まで、優遇措置をふんだんにして何とか沖縄に企業誘致してきたが、今度は、その必要は小さいだろう。アジアや中国に突き刺さった「最西端の日本」であるという沖縄の地政学上の位置が最大の優位である。今後の進展に注目してもらいたい。