2010年度予算が衆議院を通過した後、3月6日、7日と急に前原国土交通大臣が沖縄視察を行った。実は前原大臣は内閣府沖縄担当大臣も兼務している。普天間問題が過熱する中で、首を突っ込んでおかなければ政治家としての存在感が希薄になると思ったわけではないだろうが、急な視察だった。もちろん、沖縄に行くからには、沖縄にとってのもう一つの関心事である、「沖縄振興計画」も避けて通れない。2002年に始まった10年間の「沖縄振興計画」は2年後に期限が切れる。次の10年の次期「沖縄振興計画」はあるのかどうか。
その責任閣僚は前原大臣である。現状を知りたいというので、土曜日は沖縄
の産業振興計画の現状を視察した。当然、筆者が主査を務めた「IT津梁(しんりょう)
パーク」も目玉事業の一つで、視察場所に決まった。沖縄県の担当官が説明す
るのが当然だが、内閣府の担当参事官の希望で、主査だった筆者に、そのレク
チュアの役が降ってきた。日帰りで津梁パークに行って、沖縄の情報産業全般
に対する現行沖縄振興計画の成果を含めて津梁パークの意義と、今後、アジア
の経済力が急膨張した時の東アジアの中心近くに位置する沖縄の重要性と情報
拠点を沖縄に置く重要性を、15分の短時間にまとめて講義した。
前原大臣は、ITのひとではないので、筆者の話に熱心にメモを取りながら、
3つの質問をした。まず、(1)東アジアの全体の地図の中に、沖縄に「GIX」の文
字が大書されているのをみて、「GIXは何の略ですか}と聞いた。筆者は「グ
ローバル・インターネット・エクスチェンジ」の略で、インターネットの中継
点、「ハブ」のこと。沖縄を情報ネットワークの中継地にする構想だ。東京、
中国、台湾、シンガポール、あるいは米国と高速通信回線で結んで、新しいア
ジアの高速インターネット網を構築し、その中継点に地理的に東アジアのど真
ん中にある沖縄が名乗りをあげようということ。現在は、インターネットは米
国を中継点にわざわざ米国経由でアジア各国がインターネット通信をしている
が、アジアの中で効率よくできるインターネットの仕組みを作ろうという提案だ。現在は、まだ、香港と細い回線でつながっている実験期間で、これからアジア全体のためにやってゆきたい、という願望みたいなものだ、と説明した。前原大臣は前かがみになって詳細にメモをとって、何度もうなづいていた。
次に(2)「津梁パーク」の説明で、「津梁」は港(津)と港(津)を結ぶ大きな橋(梁)という意味。沖縄は古来、東アジアの中心に位置して、海運によって日本、韓国、中国、台湾、タイ、マレーシア、フィリピンなどをつなぐ中継基地だったことを各国を結ぶ橋の役割、つまり「津梁」と自らを位置付けた。21世紀には情報ネットワークが海運の代わりに各国をつないでいるので、今度はネットワークや情報産業によってアジアの中継基地を目指すという意思を込めて、「津梁」という名前を付けたと説明した。前原大臣は、レジメをひっくり返して表紙を表にして表題の「津梁パーク」のところにまた、何か詳細に書きとめて、何度もうなづいていた。
3番目は、(3)沖縄の情報産業には、この10年近くで120億円の国の投資があって結果として、平成12年と18年の比較で、年間の情報産業の売上高は1000億円程度拡大した。10年間で200社近くが沖縄に進出し、新規雇用は1万6000人に及んでいる。内閣府、沖縄県の努力の結果だと思うと説明したところで、「10年間でいくらと言っていました?」と確認の質問があった。「120億円でざっと年間1000億円の市場規模拡大効果です」と返答した。
15分経過のところで、係官から時間なので、終わりにしてほしいという合図があったので、最後の方は端折って終えたが、前原大臣は歩み寄って握手を求めて、にこにこしながら「今度は東京でお話を聞かせてください」と言ってい
た。
現在の閣僚にはITに詳しい大臣がいないのが不安だが、これを機会に前原大臣もITの知識を増やしてもらいたいものである。