ある雑誌で対談した一部上場の情報サービス企業の社長が「データセンターがどんどん増えているが、過剰ではないか」と不安視していた。過剰かどうかは、需要が増えるかどうかで決まる。本当に需要は増えるのか。
もちろん、筆者は、「需要は増える」と確信している。「データセンター産業」という新しいジャンルを確立して成長させられる、と思う。「時代」はアウトソーシングへと大きく振れてゆくと見通しているからである。クラウドコンピューティングには多くの要素が入り混じっているが、そのうちの重要なファクターが「所有から利用へ」というパラダイムシフトだ。この結果、情報システムの利用効率が格段に向上し、利用コストが大きく下がる。情報処理、情報伝達のコストが下がれば、さらにさまざまな事象が情報システム、情報ネットワークの利用領域が格段に広がる。
もう一方で、社会には情報システムで処理なければならない分野は無限に広がっている。特に環境問題、安全・安心社会という緊急の問題は、大量のデータを収集、処理し、編集加工する膨大な需要を潜ませている。産業界でも膨大な潜在需要がある。やはりアジアである。日本産業界のこれからの経営戦略は、縮小する国内市場から急成長するアジア市場に向かって、いかにして市場をシフトするかだ。
顧客情報システムに収める膨大な「お客様データ」「商品のトレーサビリティデータ」と、これまでの数十倍、数百倍の情報処理、情報保管が必要になる。現在のデータセンターの総量では到底間に合わないが、問題は、その潜在需要
を適切に発掘し、日本国内で対応するようにビジネスモデルを作れるかどうかだ。
これを実現するためには、日本のデータセンターの安全基準を強化することだと思っている。「基準が厳しいとコストがかかって国際競争に勝てない」という声もあるが、コストでの競争ではどの道、勝てないのだから、信頼性などの品質を厳しく管理してこれで競争することだろう。客観的に証明できる認証制度があればさらに良いので、認証制度の確立が必要だろう。これについては、筆者が座長をしている「総務省・データセンター促進協議会、ガイドライン検討委員会」で認証制度を検討中である。中国の富裕層が「高いがおいしくて安全な日本の銘柄米を購入する」というのと同じ魅力である。
アジアの巨大な市場で日本企業が闘うポイントはコストではない。品質である。これはデータセンターのみならず、ソフトウェア開発、ソフトウェア提供でも同じことである。