データセンターをサービス輸出の本流に ~~もう一つのクラウド特区構想を~~

データセンターをサービス輸出の本流に ~~もう一つのクラウド特区構想を~~

 7月30日に筆者が副会長を務めているASP・SaaSデータセンター促進協議会(村井純会長)の総会が開催された。その中で澤田純クラウドコンピューティング・国際戦略委員長(NTTコミュニケーションズ取締役)が、興味深い指摘をした。かねて筆者もこの協議会の場で発言したことでもあるのだが、「データセンターサービスを輸出産業にする方法」のアイデアである。厳重なセキュリティによってスイスの銀行に世界の資金が集まるように、厳しいセキュリティ規制をかけることによって、日本のデータセンターに世界の情報を集められないか。すでに社会全体の安全・安心について、日本は世界で最高レベルである。この上に、さらに情報セキュリティの鍵をかけるのである。

 過剰すぎる防衛で個人情報「過」保護法が運用されている通りに情報漏えいについての意識は異常に高レベルである。これを嘆くだけではなく、強みにする方法があるのではないか。世界的に、自国に置かれたデータセンターの中身を閲覧するのは当然だと考えている国がある。暗号化すると、これを不法だとしてそれを解くことを要求する。そうした国で企業秘密を伴うデータを管理するのは回避したい、と思うのは、当然の心理だろう。そうしたニーズに応える厳格なルール下に置くのである。

 ただ、日本にも欠陥がある。スパイ防止法がなく、世界に類のない「スパイ天国」と思われている点だ。法整備が大変だとすれば、特区でこれをカバーするのである。特区では情報システムに対して高度なセキュリティの義務を負わせ、さらに人的諜報を許さないための厳格な機密情報保護条例を作って厳罰を準備する。

 クラウド特区では建築基準法やら消防法など、細かな要求を聞き入れて、いくつかのデータセンターを誘致するのに熱をあげている。しかし、もっと本質的なのは、情報という高度な価値を守ることによる競争力向上を図ることである。島国で人の出入りを管理しやすい沖縄県のようなところはセキュリティ重視の特区に適した地域だろう。データセンターの電力を効率良くすることばかりが優れたデータセンターである、という議論ばかりが横行しているが、もっと重要なデータセンターの価値は「情報を安全に取り扱える仕組みが整っているかどうか」であろう。

 特区の議論も、こうした本質的なところからの議論が必要なのではないか。

これまでの掲載

中島情報文化研究所 > 執筆記録 > METSAメールマガジン 時流跳流 > データセンターをサービス輸出の本流に ~~もう一つのクラウド特区構想を~~