粗っぽい議論だが、クラウドを理解するのに、情報の蓄積・保管するデータセンター群とこれを利用する端末群とが分離されて、それぞれが独自の発展を遂げている現象だとみる議論が出てきている。どんな端末で情報が閲覧されるのか、気にせずに情報はどんどん蓄積・保管すれば良いし、その蓄積された情報を取り出すのに都合がよい機能をつけて端末を開発すれば良い。入力用の端末の製品ジャンルもある。映像を取り込む、メールやツイッターなどの文章を作成して発信する、ICタグやバーコードなどから自動収集する、など機器やソフトウェアも独自に発展してゆく――「情報入力」、「情報保管・加工処理」、「情報出力」がそれぞれ独立して発展してゆく状況がクラウドの特色だというわけである。
その情報出力側の1つとして急速に発展し始めたのがデジタルサイネージである。
渋谷のハチ公前広場からぐるりと見回すと、ビルの屋上や壁に、デジタルサイネージの洪水である。電車の車内広告がデジタルサイネージに切り替わりつつある。駅の天井に近いところも大きな電子看板が据えつけられて、広告映像を表示中だ。さらに、最近、注目されているのがコンビニエンスストアのATMで、預金の出し入れに使われていない時間に広告を流すアイデアである。
情報出力だけではない。通りがかりの通行人の顔から性別、年齢を判別するカメラを装備して、そのゾーンのユーザーを対象にしたターゲティング広告を流す、という機能も持たせ始めた。ツイッターのようなメッセージを、ケータイやスマートフォンから入力して、大型スクリーンに表示させる、というサービスのアイデアもある。利用方法も、利用するコンテンツもまだ、初歩的な段階。今後、アイデアが次々と生まれて、社会の雰囲気をがらりと変えることになるかもしれない。
ソフトウェア開発、コンテンツ開発の需要は、デジタルサイネージの分野からも生まれてきそうだ。
ただ、問題は、規格の統一、あるいは標準化である。クラウドも、オープン型に移行してゆくと思われるが、他の端末はどうか。スマートフォンの分野ではオープン型のアンドロイドが出てきたが、デジタルサイネージはまだ、混沌状態である。標準化、規格の情報開示が進めば、ソフトウェア需要、コンテンツ需要の爆発を招きそうである。