沖縄県知事選で現職の仲井真氏が再選された。現在、全国的な関心事は普天間移転先問題だが、従来は辺野古移転を容認していた仲井真知事は、鳩山前首相の「最低でも県外」の発言を機会に、「県外」へと主張を変えた。自民党政権時の日本政府が「辺野古」というので、心ならずも辺野古を飲んだ経緯があるので、新政権が「県外」というなら、「もちろん、自分も県外」と方針を変えたのである。
その結果、「普天間基地の完全県外移転」を主張して支持を集めていた伊波洋一前宜野湾市長との主張の差が見えなくなったのが、再選の決め手になったという指摘もある。ただ、IT企業の誘致の成功など、沖縄県の経済界からは仲井真知事の実績も高く評価されており、現在、筆者も専門委員として加わっている次期沖縄振興計画の立案にも、知事の続投が望ましいという判断も付け加わった。伊波候補も宜野湾市の情報化計画を推進して、情報産業振興策については仲井真知事とは差がないと思われていたが、やはり産業振興策では現職知事の手腕を買う向きが多かったようだ。
次期沖縄振興計画では、依然として、観光とITが2本の柱になる。観光ではさらに魅力ある観光テーマの提案がいくつも出てきているし、勃興するアジアの富裕層の誘致など新しい顧客層の出現も大きい。IT産業は、クラウドコンピューティングが新しいキーワードである。東アジアのITネットワークの拠点としての沖縄のポジションが、今後の日本産業界のアジア展開を強力に支援することになるだろう。沖縄の産業振興というよりも日本経済の新しいモデルを作る上で重要な課題となりつつある。
しかし、産業の柱としては、もう一つ、新しい柱が欲しい。現在の審議の中ではなかなか見えてこない状況である。自然エネルギーや「スマートグリッド」が言葉としては浮かんでくるが、さて、どうなることか。スマートグリッドもITと密接な領域なので、沖縄の第3の柱になれば、メッサのメンバーにもプラスの影響が出るかもしれない。