2011年、卯年、明けましておめでとうございます。
旧年までの憂いを忘れて、希望を抱いて……と言いたいところだが、何か、胸に重たいものを抱えた新年である。
著しく安定を欠く政権、隣国の急膨張、世界的な気象異変――2010年を振り返ってみると、新年に大きな不安を持ちこしてきたのである。日本経済を待っているのは「波乱」である。せめて「混乱」にはしたくない。「波乱」は従来の路線が通用しなくなった一時的な現象で、その中から新しい主役が躍り出てくるのがこれまでの通例である。
情報産業には、さらに「クラウド」という大きなうねりが押し寄せてきている。情報産業の主役が「クラウド」の中から登場するのは確実だろう。2010年までの段階では、有力な主役候補はグーグルであり、アマゾンやセールフォースといった米国勢だった。スタートから一挙にトップ集団を形成して、旧来の情報産業の世界に波乱をもたらした。
受けて立つ既存の情報産業界、とりわけ日本の情報産業は新しい事態を見極めるのに時間を浪費して、その方向性を打ち出すのが遅れた。日立や富士通、NECは「見よう見まね」でどうやらクラウドに追いつくための準備を整えた、というのが10年までの実態ではなかったか。
しかし、見回せば、危機的な波乱の中でSaaS、IaaS、PaaSについても、日本流の新しいビジネスの芽が着実に育ってきたと思える。大手ベンダー、大手SI会社にも活発な動きが出始めたが、情報産業の従来の主潮流ではなかった付近から、成長の兆しが見えていた。波乱がなければ既存の主役たちから弾き飛ばされて成長の機会を得られなかったビジネスの芽である。波乱が大きかったので、数多くの芽が育つことができた。11年も波乱が続けば、新たな主役の候補たちがさらに成長する機会が大きくなる。「2011年の波乱」は、結果が吉となるように工夫を凝らしたいものである。