先週開催された「賀詞交歓会」の前に開催された講演会で、鈴木寛文科省副大臣に登壇いただいた。鈴木副大臣は、通産省(現経済産業省)時代の情報処理振興課長補佐、電子政策課課長補佐を務めたが、その就任時に、ソフトウェア産業の現状をレクチュアして、その後ずっと師と仰いでいるのが、メッサの創業者、横尾良明最高顧問である。鈴木副大臣には、昨年の賀詞交歓会の講演会講師、今年の講師と2年連続で快く引き受けていただいたが、かつての「師」への感謝を込めた講師引き受けだった。
しかし、それにしても、この1年数か月の鈴木副大臣が教育行政に与えたインパクトは大きなものだった。昨年も話題になったが、スーパーコンピューター開発予算が「仕分け」にあったとき、わずか5日間で、単独に使用されていた国の管轄にあるスーパーコンピューターをネットワークでつないで利用しあえ
る仕組みの予算要求に切り替えて再提案して、当初予算よりもプラスアルファの予算を獲得した裏話を披露してくれた。その際には厚生省、経産省、文科省それぞれ、監督官庁がばらばらのものをつなぐために、縦割りの省庁の壁をたたき壊して短時日に予算を作りなおした。省庁の壁は壊せるという確信を得た経験である。
もっと大きな革新は文科省「政策創造エンジン」と名付けた「熟議カケアイ」の仕組みである。中央教育審議会などの専門家の検討だけに「教育」の議論を任せるだけでなく、教育当事者たちが徹底的に議論できる環境を準備してそこで様々な意見を闘わせ、政務三役がそれらの議論を踏まえて政策決定を行う、という政策決定過程の創設である。当事者たちに議論を戦わせる場所は、もちろん、インターネットである。実際に、閉じられた場所でプロセスを踏んできた政策形成が、開かれた場所に移された。その成功の証が、教育関係予算の大幅な増加である。限られた情報に基づく予算請求ではなく、現場の生の声を多数、聞いたうえでの政策であることを、財布のひもを握る財務省との折衝の場で、説得力あるデータとして示す事が出来たのである。
インターネットは確実に行政を変質させつつある、ということを実感した。講演会に出なかった組合員の皆さんには申し訳ないが、大変に実りある講演だった。