存在感を増す沖縄の情報産業

存在感を増す沖縄の情報産業

 沖縄で内閣府の会合があって、震災後2度ほど沖縄に出張した。データセン
ターの経営者が2人混じっていたが、その話によると、内地の企業から問い合
わせが殺到しているそうだ。コールセンターも同じだが、まず、東北地区のデ
ータセンター、コールセンターが電力不足、通勤難などから十分な運営ができ
ない。緊急に代替えの施設を求めて打診してきている。

 さらに、この夏に予想されている深刻な電力不足に備えて、首都圏のデータ
センターやコールセンターが、バックアップを検討し始めている。以前から、
沖縄はバックアップ拠点として重要な地域だと企業誘致を行ってきたが、人は
想像だけでは動きにくいものらしい。実際に直面して、あわてて動き始めた、
というのが実情だろう。

 沖縄は歴史の記録に残るような大地震は経験していない。しかし、だからと
言って大地震がないとは限らない。強みは大都市圏から遠いことである。大阪
から1000キロ以上、鹿児島からでも500キロ近い。大地震があっても大阪や東
京と同時被災しないというのが、沖縄がバックアップ基地として有力な理由で
ある。

 ただし、急に多数の企業に来てもらっても困る。電力のゆとりはそんなにな
い。インターネットのための回線も容量不足になる。これらのインフラを増強
しながら順番に拠点つくりをしてもらわなければならない。早い話、「先着順」
である。すでにバックアップ基地として活用している企業も増強に動き出すだ
ろう。新規進出よりもその方が優先になるから、先着順といってもその枠は大
きくない。

 「転ばぬ先の杖」というから早い目に手を打ったところがこの非常事態では
有利な条件を獲得する。そして、沖縄に拠点を作って何度も来ているうちに、
沖縄がアジア市場にきわめて近いことに気が付いて驚くはずだ。単にバックッ
プではなく、アジアへの玄関口としての重要性も認識できるに違いない。日本
再生のカギは、アジアに近い、大災害を同時被災しない「沖縄」という地域が
握っているようだ。

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