野田政権は成立したとたん、閣僚の失言による辞任や各種のスキャンダル記事の「紙爆弾」に見舞われて、政策執行の初手から難関にぶち当たっている。しかし、マスコミの「揚げ足取り」に終始するこの報道姿勢は異常である。新政権ができたばかりで、その実績の一端を見せる余裕もなく「袋叩き」にするというのは一体、どんな料簡なのか、と怒鳴りつけたくなる。
通常、新政権ができれば90日間、およそ3か月は、温かく新政権の施策を見るというのが従来の暗黙のルールだった。「蜜月」の時期を作って、何をしようとしているのか、その政権執行の実力を見てみようというのである。政策実行とは無縁の「失言」や「周辺のスキャンダル情報」をまき散らして政権の執行を最初から妨害するというのは、どんな政権にも何もさせないという「不毛の社会」を出現させる危機を感じる。少なくとも90日は、マスコミも与党であれ、我慢しろ、と言いたい。
なぜ、ここまでマスコミはいらだつのか。もちろん、政治がだらしないので、というのは言い訳である。その前にマスコミの方がもっとだらしないのである。というか、インターネットによって情報収集手段が多様化してマスコミの信頼性が急落していること、さらにケータイ、スマートフォンの登場による夕刊紙や週刊誌の大幅な販売部数の落ち込みと広告のネットへの移行で、マスコミの経営基盤が崩壊の危機に直面していること、など、フラストレーションが溜まっている。そのフラストレーションのはけ口として狙われたのが、人気商売として反論が難しい芸能人と政治家である。人気商売はつらいものである。
ただ、本質的な政策実行に縁が遠い問題で時間を費やし、未曾有の日本の危機である時期に、政策実行を徒に遅らせるのは極端に言えば犯罪的ですらある。せめて、新政権誕生期には、90日の蜜月のルールを思い起こしてもらいたい。