今度こそ「国民ID」で電子政府の実現を

今度こそ「国民ID」で電子政府の実現を

 東日本大震災の被災者に対する行政サービスが大混乱に陥って、「国民ID」を早急に制定すべきであるという意見が高まっている。何も「国民ID」と言わなくても、住民基本台帳ネットワークの機動的な運用で十分なのだが、すでに「住基ネット」について過剰なアレルギーが生じてしまったので、住基ネットについて名誉回復し、正当な評価を今から得るのは難しいだろう。年金番号、社会福祉番号、納税番号など、いま、要求されている番号制度は住基ネットを基本に組み立ててゆけばすでに完成されていて然るべきものだった。運転免許証、パスポートなども管理は簡素化され、ガス、水道、電気、貯金などの公共的機関の管理も効率的に行われていたに違いない。つまり、日本の電子政府は相当に進展していたに違いない。

 過剰な慎重論によって住基ネットの利用は著しく制限され、今回の震災時にも、被災者の避難所への収容、医療施設での施療記録、さまざまな物資の支給、避難所の移動や他の地域への疎開など、住基ネットが法的制約によって使えないため、能率が悪く、大混乱を来した。

 すでに、年金など福祉制度でも、住基ネットが利用できれば「消えた年金」は防げたはずだ、という認識が広まっている。個人情報漏えいのリスクよりも、電子化による便益が数百倍、数千倍も勝っているにも関わらず、一部のリスクを大々的に誇張して騒ぎ立てるわずかな人々に惑わされて、日本の電子行政は手足を奪われてしまったのである。

 ようやく、「国民ID」の形で電子行政の基本になる共通番号の制定が大きく前進しつつある。「共通番号は危険である」という呪文のような言葉の勢いが薄れ、その魔法が解けつつあることを喜びたい。早く、電子行政システムの建設へと歩み始めたい。

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