「戸籍」って本当に必要なの?

「戸籍」って本当に必要なの?

 ある研究会で、電子自治体を進めるうえでネックとなっている漢字の「外字」の問題が取り上げられた。現在、IPA(情報処理推進機構)で、住民票や戸籍などに使われる外字を取り扱う膨大なデータベースを構築しつつあるという話である。涙が出るような膨大な作業が精力的に進んでいる。もちろん、多額の資金がここに投じられている。

 もっとも厄介なのが戸籍に使われる外字である。渡辺の「辺」だけでも「渡邊」「渡邉」など字体は多数、数十種類もあるそうで、これを戸籍では各地の自治体が住民の要求に基づいて忠実に受け付けているため、コンピューターで取り扱えない重大な支障を来たしているそうだ。それが組み合わさるので複雑度は増す。至近な例として「浜崎」という苗字を挙げてくれたが、「浜」は「濱」など4種類、「崎」は扁の山が冠になる「嵜」のほか、山の下の部分が「大」か「立」に分かれて合計4種類、さらに「はまざき」「はまさき」と濁りのあるなしで、32通りの組み合わせになるそうだ。住民が申請するままに登録したために、実態は情報システムでは処理するのに大きな手間を食う状況になっている。戸籍は住民が筆記した申請通りに登録したために、漢字なども単に申請者が間違えただけでも漢字が「創作」されてしまう。こうして外字
が増えてしまった事情があるそうだ。

 データで送信しようとすると、相手の自治体のコンピューターでは外字としてばらばらに登録してしまっているので、相手先のシステムに外字登録がなければ「〓」になるし、登録番号に違う外字が入っていれば、別の文字が表示される危険すらある。

 次々と難題を抱えている。

 ところが、こういう戸籍があるのは国際的に稀有なのだそうだ。欧米には例がなく、途上国はもちろん、戸籍の整備はないそうだ。最近まであったのは韓国で、これは廃止されたという。日本統治時代の名残を消し去ったのである。台湾はまだあるそうだが、これは日本統治時代の制度を温存している。親日の国である。

 パスポート取得や運転免許証の取得、相続など、戸籍を使う場面は限られている。それも外国では他の方法で十分で機能している。だとすれば、面倒な外字処理に格闘することなく、戸籍そのものをなくしたらどうなのだろうか。外字処理のために膨大な投資をするより、戸籍をなくし、当用漢字に使用文字を集約して、簡素化を図ったらどうか。住民の意思を尊重すると言っても、限度がある。どうしても外字を使いたい人には、システム例外文字を使う多額のコスト負担を利用者負担で支払ってもらうという手もあるが、これも不満が噴出するだろう。様々な不満を根本的に除去するには戸籍廃止が最も手っ取り早いのではないだろうか。

これまでの掲載