「シンクライアント」はよく聞く言葉だが、さらに徹底した「ゼロクライアント」の製品が登場している。かつてのダム端末の現代版と言っても良いか。
元々、コンピューターの入出力の端末はデータの入力や出力だけの機能しかなく、指示命令するホスト(ご主人)コンピューターに対してスレーブ(奴隷)端末などとも呼ばれていた。それがマイクロプロセッサーの登場で端末がさまざまな機能を自身で持つようになって、インテリジェント(知性をもつ)端末と呼ばれるようになった。さらにパソコンが登場してそれ自身がコンピューター機能をもってホストコンピューターと機能分担するまでになってリッチ(機能豊富な)クライアントに成長した。
インターネットの発展、スマホやスマートタブレットなどの携帯型の高機能端末によって、外出先や自宅で仕事をするようになると、セキュリティ対策、データ漏えい保護対策から、何でもできるパソコンのようなリッチクライアントには不安を感じるようになった。さらにOSやアプリケーションのバージョンアップをパソコンごとに行わなければならないリッチクライアントの欠点を克服するため位、機能を制限した「シン(細身の)クライアント」が出てきた。しかし、これでもかなりの機能を端末に持たせているので、結局、コスト高になって、期待ほどには普及していると言い難い。
「ゼロクライアント」はさらに機能削除を徹底したものである。セキュリティや運用コスト面でメリットがあるだけでなく、省エネ、クリーン化という側面でも長所がある。システム構成によってばらつきがあるが、コスト面では従来の半部以下になるのではないか。
3月のメッサ協議会では、米国の「ゼロクライアント」の大手、NComputing Pte. Ltd Country Manager(Japan) の山田哲夫氏を招いて「シン(thin)クライアントを超えるゼロ(zero)クライアント・システム 〜その特徴と事例〜」と題した講演を行った。キャッチフレーズの良さだけではなく、クラウド時代には、利用するユーザー側は端末だけが問題になるが、この装置は弁当箱より小さな機械で、これにキーボードやディスプレーを接続してインターネットにつなげばクラウド端末になる。近未来の業務スタイルを覗き見た思いである。メッサ協議会では、毎回、こうした最前線の講演を行っている。メッサ組合企業の皆さんにも多数参加して、最前線の情報を収集してもらいたいものである。