首都直下地震や南海地震が発生した際、最悪のケースを想定した震度分布や津波の規模が、文部科学省などから相次いで発表されている。これまでの想定が甘すぎるとして、希望的観測ではなく、厳しく想定した場合の予測である。実際に、次の大きな地震が来るまでに時間的余裕はなくなりつつあるので、新しい予測に基づいて企業は可及的速やかに行動を起こさなくてはならない。
新しい予測では、最悪のケースで、首都直下地震は東京23区全域で震度7か6強が襲う。首都圏はデータセンターの72%が集中しているが、データセンターのある地点を点検するとほとんどが震度7から6弱までの地域だ。便利だからとユーザーの要求のままに近場の首都圏ばかりにデータセンターを建設した誤りが、いま、緊急の対策を迫っているが、ベンダーはどのように対応するのか。
しかし、もっと大きな危険は原子力発電所である。世界でも最も大地震が頻発するこの日本で原発が安全に地震を乗り切れると考えるのは楽観的すぎる。日本中が活断層の上に乗っていると言って言い過ぎでないような日本の国土に本当に原子力発電所が適していたのだろうか。現実に多くの原発が大きな活断層の上に建設されていることが、今になって分かってきている。施設の補強で済むようなレベルではない。
津波が従来の想定より大きくなるからといって防潮堤を高くしても、地震の揺れで防潮堤が劣化すれば、津波を食い止めることは難しい。それに耐えうる
ものと、次々に補強すれば、そのコストは膨大になって、「コストが安い」という原発のメリットも吹き飛んでしまう。要するに、原発は適していなかったのである。
「今回の福島の事故を教訓に、安全性の高い原発へと改善する」というのは、言葉の遊びである。安全性が少し高くなっても、無意味である。原発のように事故が起きれば広範囲に致命的な人命の危機と経済的損失、国家の信用失墜を引き起こす巨大技術は、完全性を要求するが、それを求めればコストは幾何級数的に膨張するので、そもそも経済的には引合わないのである。多額の地域補助金などではなく、最初から、太陽光や風力、地熱の発電技術を開発することに資金を回していれば、今頃は、国産エネルギーを利用したコストの安い安全な電力が大量に供給できる体系が出来上がっていただろう。
もう、目を覚ます時なのに、まだ、原発の再稼働に執着する政治家や行政、電力会社がある。誤りをまた繰り返すつもりなのか。