「電子政府」の構築が思うようにならない中で、2つの挑戦は「突破口」として期待される。1つは国民の識別電子コードである「マイナンバー」の実施である。法律は現在の混迷国会に上程中なので、果たして成立するかどうか、まだ懸念があるが、法案として上程されただけでも大きな前進である。住民基本台帳の住基コードはさまざまな抵抗があって共通識別コードになるはずのものが途中から立ち往生したが、税の公平な扱いや年金、福祉の前提条件としてマイナンバーが認識されているので、今後は前進してゆくだろう。
もう1つが「オープンガバメント」である。
オープンガバメントは公開性を高める行政のあり方を目指したものだが、オバマ米国大統領は「透明でオープンな政府」の中で、従来よりも公開性を高めるために、「政府・政策・情報の透明性」、「市民参加」、「政府内および官民の連携」の3原則を打ち出しているが、日本では、3番目の「行政がもつさまざまなデータを行政諸部門で有効に活用しあうこと」や「公開する行政のデータを民間が活用して経済を活性化する」という点が特に強調されている。米国では行政管理予算局が提供するサイトの「Data.gov」が有名で、連邦政府機関が保有する国勢、環境、経済状況などの各種のデータを提供している。日本でも行政情報が各機関のサイトに掲示されるようになっているが、PDFで公開されているケースも多く、このデータを処理加工しようとするといったん、自分でエクセルの表に書き込まなければならない、というような不便が多い。これに対して新しいオープンデータでは、生データやツール、地理情報を提供し、他の行政部門や民間の利用者が加工や分析をしやすくする。
電子行政は国民の行政手続きを容易にし、また行政サービスの側が国民に手厚いサービスを行えるような有用なシステムを構築することを目指している。さらに、その上で、行政が「死蔵」していたデータを開放して、経済価値を生み出す素材として利用させようというのがオープンガバメントの発想である。まだ、十分に進展していないが、ITを知っているものにとってはビジネスを生み出すチャンスが広がることになる。動向をウオッチしながら、次のビジネスの創造を構想して行きたい。