事実はよく分からないが、メディアによると尖閣問題で中国国内が、竹島問題で韓国国内が、それぞれ「反日」に燃え上っているようだ。特に中国国内が激しいように報道されている。丹羽中国大使の公用車の日本国旗が強奪されるという事件まで起きた。
「事実はよく分からない」と前置きするのは、報道には、特定の目的を持ってなされる偏ったものが多いからだ。確かに事実を報道しているが、しかし、事実の一部しか報道しないのである。報道機関に意図があるケースもある。担当している現場が意図を持って事実を選択して編集し、視聴者を誘導しようとするものもある。新聞でいえば社説を読むと、露骨に読者を誘導しようという姿勢がみえるし、テレビではバラエティ番組や報道特集などにその傾向が顕著だ。そうしたメガネを通してしか見えないので、事実は分からない。
中国からきたビジネスマンに聞いても、「反日」デモは局地的で、全体の中国人は特に反日的ではない。もちろん、ネットの書き込みなどは、いつものように、「反日」の発言が目立つが、これは自然発生的とは思えない、もっと露骨な意図が見えるので、ここから中国国民全体の傾向を読み取るのも難しい。 どうすれば良いのか、方法が見つからないので、空念仏のようになるが「冷静に」というのが、当分の姿勢だろう。筆者は「美ら島(ちゅらしま)沖縄大使」でもあるので、尖閣問題は他人事ではないし、八重山漁協の上原亀一組合長も親しい知人なので、非常に近しい問題である。しかし、渦中に入れば、状況はもっと見えなくなる。政治的課題に巻き込まれて頭を熱くしすぎると、メディアの扇動に振り回されることになりかねない。
冷静な対応という点では模範例もある。台湾と中国の関係である。政治は激しい対立関係にありながら、経済は融合し、産業は一体化を始めている。経済や産業の一体化の中で、信頼関係が醸成されて行くことが、時間はかかるが、最も着実な方法ではないか。その範にならって、いたずらに「政治化」せず、産業人として、アジアの産業一体化への道を一歩一歩、踏み固めてゆくべきではないか。