矛盾に満ちた国家エネルギー新戦略
2012年10月01日
政府は14日にエネルギー・環境の新戦略を決めたが、全く矛盾だらけで、この内閣の余命が幾ばくも無いと心配させられる状況である。原発を2030年にゼロにするとしながら、つまり、原発を新増設しないとしながら、15日に青森県の三村知事と会談した枝野経済産業相はJパワー(電源開発)の大間原発の工事継続は問題ないと伝えた。島根原発の3号機も工事再開を認めるという。
2030年に原発ゼロというのは、常識的に考えれば、2030年には仮に稼働している原発があったとしても停止する、ということではないか。そうだとすれば、大間や島根の原発が完成して稼働を始めても、停止・廃炉まで、15年程度しか稼働しない。その程度の稼働で投資が回収でき、採算が取れるものか? ユーザーは、えらく高い電気料金を払うことになりかねない。枝野経産相の真意が測れない。
2014年4月以降に電力事業は発電、送電、小売りに分離されることが決まったが、原発は当然、多数の新規参入企業も加わって激戦となる「発電会社」が受け入れることになるはずだ。原発はこれまでは「コストが安い電力」と言われたが、それは使用済み核燃料の処理コストや廃炉コストなどの膨大なコストを計算に入れていない時の計算だ。しかし、2030年に廃炉への道、ということになれば、当然、廃炉コストを先延ばしにした決算はできないだろう。そうなると、発電会社は原発を引き受けたくないはずである。原発による電気は一転して「コストのかかる電力」に転落する。その原発をさらに増やす、というのは、後々の事を全く考えない信じられない判断である。
仮に青森県が進めようとしても、採算性を考えるJパワーが果たして、決断するかどうか。とにかく、電力業界も経産省も思考停止か。無茶苦茶な状況である。