「地域主義の再評価」

「地域主義の再評価」

 一時期、「地域パソコン通信ネット」「地域ISP(インターネット・サービス・プロバイダー」「地域SNS」や「地域IX(インターネット・エクスチェンジ)」など、情報通信インフラを各地域で展開しようという動きが地方自治体で盛んだった。情報通信インフラだけでなく、「地域通貨」など、地域単位の経済圏を形成して、地域主権を確立しようという意気込みが各地でみられた。

 ただ、その多くの試みが志を遂げずに終わったか、事業縮小の憂き目をみている。規模の効果が出るほどのユーザー数の集積にならず、全国規模のベンダー、世界規模のベンダーが地域のユーザーにも低料金でサービスを提供し、グローバルベンダーに至っては、無料でサービスを提供するので、地域サービス事業者のビジネスが成り立たなくなっているのだ。

 しかし、東日本大震災以来、災害時・緊急時の情報インフラを考え、時間が経過するにつれて、どうも、外国サービス会社全面依存、全国規模サービス事業者依存ではまずいのではないか、と思うようになった。特にインターネットエクスチェンジは、国内では東京で95%を処理する過度な集中になっている。東京が大きな災害に遭うと、国内のインターネットでの利用が壊滅的に機能不全になる。もちろん、東日本大震災時に役に立ったツイッターやフェイスブックも、インターネットがつながらなくなるので、今度は役立たない。東日本大震災の際には、東京の打撃が壊滅的でなかったからインターネットが機能したが、災害の中心が東京であれば、日本全体がインターネット空白地帯になる。

 まず、このリスクを軽減するためにはインターネットエクスチェンジを全国各地に開設し、そのいくつかは海外につながるグローバル・インターネット・エクスチェンジ(GIX)にして、機能分散を図るべきだ。ISPも各地で地域情報も充実させ、自治体行政とも密接に連携した地域ISPを再び育成すべきだ。一時期は地域の活性化を目指していたが、今度は違う。大災害から生き残るための地域ISPだ。このISPを軸に地域ツイッターやソーシャルネットワークサービスの「地域SNS」を機能するように育成すべきである。

 これは日本のリスク軽減のためである。グローバルに集中すれば短期的な効率化にはなるが、長期的に見れば、必ず起こる災害時のリスクに耐えられず、経済メリットよりも損失の方が大きい。短期的には非効率に見えても、長期的にはメリットの大きい地域情報インフラの育成に舵を切り換えるべきである。これまで短期的な効率化にばかり目を奪われて、長期的な最適化をないがしろにしてきた。情報通信インフラの考え方を根本から切り換えるべきである。

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