菱洋フォーラム 2003年12月12日
「一衣帯水」=韓国は日本のインフラである。
こういうと韓国の産業界の人に失礼かもしれないが、どうもブロードバンドはこれまで考えなかった産業構造を提示するかもしれない。韓国が日本の産業界にとって各種の情報サービスを提供するプラットフォームになる――という構造だ。分かりやすく言えば、日本の産業を情報システムの面から支える情報サービス基地として、韓国が台頭してくる予感がする。
これはブロードバンドインフラが韓国と日本に行き渡ってみて、はっきり見えてきたことだ。日本国内では高速のネットワークが使い放題になった。一方、韓国のネットワークは日本より早く使い放題の高速環境である。韓国にソフトウエアを保管したASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)のサーバーを置く。一時のiDC(インターネット・データ・センター)ブームが去った後、韓国ではデータセンターの能力は著しく過剰のようだ。これを利用すれば、ASPサービスなどは安全で高速で、かつ低料金で可能になる。
一方、日本より早くブロードバンドが整備された韓国では、映像情報やオンラインゲームなどのアプリケーションはたっぷりある。e-ラーニングのソフトウエアも豊富だといわれる。能力過剰になったiDCを活用して、ブロードバンドを経由して日本のユーザーにサービスを提供する、というモデルである。日本にブロードバンドが普及しないうちはこれはただのお話に過ぎなかった。しかし、いまや日本は韓国に次ぐ世界第二位のブロードバンド大国にのし上がろうとしている。各家庭にはADSLや光ファイバー、ケーブルインターネットなどの定額、使い放題で高速のサービスが行き渡ろうとしている。
たとえば、驚いたサービスに、メンバーがそれぞれホームページにアクセスして電子テレビ会議室に入り、遠隔地にいるメンバー同士が一堂に会して議論をするサービスがある。画面を16に切って、最大で16人のメンバーが参加できるが、そのライセンス料が定額で一人年間3万円だという。10カ所に営業所をもつ中小企業なら、毎日、朝晩、営業会議をやって年間30万円で済むことになる。これで営業の活力が刺激される。
サーバーを韓国に置いても、ブロードバンドではほとんど遅れはない。こうした映像系のノウハウが韓国にたまり、日本の産業社会がブロードバンドに移行するに従って、そのノウハウが生きてくる。日本の企業はこれを借りて、効率よい経営へと移行することができるだろう。「アジアは一つになる」――そんなことを感じさせる現象が進行中だ。
菱洋フォーラム 2003年12月12日